第6章 人騒がせなマスコミ
下手に行動できないようにか、私の腕を焦凍がしっかりと掴む。そんなことしなくても何の考えも浮かんでない以上、下手に行動したりはしない。それに、行動する時は焦凍にちゃんと言うのに。もしかして、私って焦凍にじゃじゃ馬か何かと思われてる?
一緒にエンデヴァーさんの訓練を受けてきた記憶が脳内を駆け巡る。……一撃入れるために、確かに女の子らしくない無茶もしてきたかもしれない。でも、だからってこんな扱いはあんまりじゃないかな。
「皆さん、だいじょーーーぶ!!!」
食堂内に響き渡った聞き覚えのある声にびっくりしてそちらを見る。それは、出入口で起こっていた。よく見かける非常口。その上に、これまた非常口のポーズをした飯田君が張り付いている。どうしてそうなったのか?なぜそうなったのか?呆気にとられたのは、きっと私だけじゃない。その証拠に、今まで騒いでいた生徒達は皆静かになっていた。
「ただのマスコミです!何もパニックになることはありません!だいじょーぶ!!!ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
ただのマスコミ。飯田君の言った情報は静かに広まって、あれだけのパニックが徐々に治まっていく。っていうか、原因ってあの門にいたマスコミ!?なんてはた迷惑な……。
丁度いいタイミングでパトカーのサイレンの音も聞こえてきたお蔭で事態は一気に収束へと向かっていく。後から聞いた話だと、校舎まで詰め寄せてきた悪いマスコミは一人残らず警察に引き取られていったらしい。先生達も私達も非常に迷惑をかけられたので、警察がこっぴどく叱ってくれることをめちゃくちゃ祈っている。
こうしてお昼の大騒動は、雄英生に“マスコミは時にヴィランになるんだよ”という教えを残して終了した。
――そして、午後のホームルーム。緑谷君は、お昼休みでの飯田君の活躍を見て、彼を委員長に推薦した。確かに、クラス一つどころかパニックに陥った大多数の生徒達を率いた飯田君は委員長にはもってこいなのかもしれない。食堂で飯田君の活躍を見たのは何も緑谷君だけじゃなかったらしく、クラスの大半が緑谷君の意見に賛成の声を上げる。ちょっと複雑そうな八百万さんを残し、飯田君は緑谷君から無事委員長の座を引き継いだ。
そんな楽しい学園生活を楽しんでいた私達は、その裏で大きな闇が蠢いていることに何一つ気が付いていなかった。