第5章 戦闘訓練
「よく知ってるお前なら、至情がどう戦うのかも予想つくんだろ?どう上鳴と戦うのか、教えてくれよ。」
「どうって……めちゃくちゃ単純だぞ。」
「単純?」
「相手より速く動いて、倒す。ただ、あいつは隠してるつもりみてぇだが意外と悪戯好きだ。色々できるヴィラン側になったんだ。多分遊ぶだろ。」
モニター見てろ。そう伝えるとツンツン頭は素直に目線をモニターに戻した。モニターの先では、丁度電気の奴と奏が鉢合わせしたところだ。
場所は3階。駐車場みてぇな、柱が沢山立っている部屋のないフロア。ヒーロー組も迷わずにすむだろうが、それ以上に奏にとってこれ以上ないほど動きやすい場所だ。
電気の奴が手のひらに電気を出しながら奏に向かって何かを言っているのが見える。それに対し、奏はサーベルを二本手元に呼び出して思い切り足元に刺し、相手に“向かってこい”と指で挑発する。挑発に乗った電気の奴が、思い切り奏に向かって放電する。が、放電された瞬間にいなくなった奏の代わりに電撃は刺したサーベルにぶち当たる。まぁ、電気なんだから金属に向かってくのは当然だな。それに気を取られている間に、奏はすでに相手の後ろにいる。後ろから伸びてきた捕縛テープに抵抗する間もなく電気の奴は捕らえられた。
「むむ。至情少女は随分速いな。通常、あれだけ速く動くと目が追い付かないものだが、ちゃんと追えている。動体視力を鍛えてあるのか。しかし、彼女って結構悪戯好きかい?随分ノリノリでヴィランを演じているが。」
通信機で会話を聞いているオールマイトとは違って、俺達は声を聞くことはできねぇ。が、めちゃくちゃ楽しんでるのは見ていてわかる。八百万から受け取ったんだろう捕獲テープで電気の奴をぐるぐる巻きにしながら楽しそうに笑う奏を見て頬を緩める。あんなに楽しそうにしているのを見るのは久しぶりで、それだけでも雄英に来てよかったんじゃねぇかって思った。