第5章 戦闘訓練
――轟side
「では時間だ。訓練スタート!」
開始の合図が告げられると同時に、ヒーロー組が行動を開始するのがモニターに映る。ヒーロー組の女の方が壁に耳から伸びてるイヤホンのようなものを壁に刺し、上を指さしている。それを見た金髪の男は手のひらから電撃を出しながら、悠々と上を目指して歩いていく。
一方のヴィラン組は、奏を先兵にして籠城戦をするらしい。さっきの講評の八百万、だったか。そいつが身体から色々出しては、扉を塞いでいるのが映し出されている。このままなら、奏と電撃を出してる奴が戦うことになる。もしそうなったら――間違いなく、奏が勝つ。むしろ、2対1でもあいつが勝つんじゃねぇか?
2対1で戦うことの難しさも知ってるし、ヒーローチームを馬鹿にしているわけでも、見下してるわけでもねぇ。ただ、それができるぐらい俺と奏は訓練を積んできた。普通程度じゃ、俺達には勝てねぇよ。
モニターをじっと見ていると、トゲトゲした髪型の奴が俺の隣に移動してくる。目線だけで一度そっちを見てからモニターに戻すと、そいつが俺に話しかけてきた。
「なぁなぁ、お前至情と幼馴染なんだって?」
「ああ。」
「ちょっと話しただけだけど、いい奴だよな。」
慣れ慣れしく肩に腕を回しながら俺に問いかけてくるそいつの腕を退かしながら、奏のことを考える。奏は、こいつが言うようにいい奴だ。そうじゃなきゃ、あのクソ親父の訓練に耐えてまで俺の傍にいようなんて考えねぇ。それに他の女と違ってうるさくねぇし、俺自身のことをちゃんと見ててくれる。
「……あいつはお人好しで、周りをよく見ている、と思う。すぐに誰とでも仲良くなれる奴だ。」
「確かに、よく周り見てるかもな。個性把握テストん時もじっと皆の見てたし。」
「……ああ。」