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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第5章 戦闘訓練


 まだ何かを言い募ろうとした峰田君の両頬を、白いコスチュームを纏った腕が掴む。焦凍だ。そっか、丁度隣のBチームにいたんだね……。
焦凍は峰田君に合わせるようにしゃがんで、頬を掴んでいる右手を氷結させながら峰田君としっかり目を合わせている。

「そういうことは、するもんじゃねぇ……。」
「わ、悪かった……許してぇ……」
「謝る相手が違ぇよ。」
「し、至情ー!悪かったー!謝るからこいつを止めてくれぇええ!」

 涙腺を爆発させながら峰田君が私に助けを求めてくる。けど、ごめん。さっきくじを引いた八百万さんが私達のチームメイトになったから、余計に峰田君を解放するわけにはいかなくなった。

「えーっと、焦凍。できればそのまま押さえててくれると嬉しいかな……。」
「わかった。」
「凍る!凍っちまうって!せめて氷はやめてくれぇええええ!!!」

――

 場所を移動して、演習を行うビルの地下にあるモニタールーム。散々泣き喚いた峰田君は、一組目が戦闘訓練を開始すると同時に解放された。勿論、“セクハラしません”と堅く約束をさせた上で。
一組目はヴィラン組が爆豪君と飯田君のD組。そしてヒーロー組が緑谷君と麗日さんのAチーム。昨日の時点でわかりきっていたことだけれど、爆豪君は個性も性格も爆発物のよう。態度も口調も粗暴で、更に喧嘩っ早いというとてもじゃないけどヒーロー志望には見えないヤンキー。そんな爆豪君と、気弱ではあるけれど諦めない心を持った緑谷君。このクラスで一番気になっている緑谷君が出るのだから、しっかりと観察しなければ。そう思いながら観戦した一組目の戦闘訓練は、苛烈のひとことに尽きた。
最初は緑谷君が個性を使うことなく爆豪君相手に善戦してみせたけれど、それも爆豪君が大規模な爆撃でビルの一部分を吹っ飛ばすまで。その一撃の威力は地下のモニタールームを揺らすほど高く、緑谷君に当たってはいなかったものの、彼のペースを崩すには十二分。調子を上げた爆豪君は見た目に反した繊細なコントロールで“爆破”の個性を操り、一度は己を翻弄した緑谷君相手に激しい攻撃を連続で叩き込んだ。

「これじゃ、リンチだ。」

 きっと、だれしもがこの訓練を止めないと緑谷君が危険だと思った。私だって、流石にこの状況から緑谷君が勝てるとは思わなかった。でも、緑谷君はやりきった。
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