第5章 戦闘訓練
色んなダメージを心に受けつつ、揃ってグラウンドβに移動する。丁度同じタイミングで男子更衣室から出てきた男子達とも合流して、入試会場にもなった演習場にまた足を踏み入れた。
時間にも、心にも余裕ができたし、改めて皆を見渡してみる。コスチュームに着替えると皆の雰囲気も変わって見えるなぁ。そのまま見渡していると、めちゃくちゃ氷を主張するコスチュームが目にはいる。なんてわかりやすい……!あまりのわかりやすさに雷が落ちたような衝撃が走る。
白のカッターシャツに、白のズボン。そして、嫌悪する左側を頭からブーツの裾まで覆い隠す氷のようなアーマー。どこからどう見ても“俺の個性は氷です”とこれ以上ないくらいアピールしている。見た目なんて二の次の、どれだけ父親を完全否定できるかに全てを注ぎ込んだコスチューム!
焦凍らしいといえばらしいコスチュームだけど……せめて、マスクのデザインはなんとかならなかったのかな。氷に不気味に輝く赤い目とか、ゴーレムじみててちょっと怖い。
「全員揃ったな!さぁ、戦闘訓練のお時間だ!」
オールマイトの声が、特注のコスチュームにテンションが上がっていたクラスの皆を落ち着かせる。焦凍に何が言えるわけでもなく、ただもじもじと悩んでいた私にはありがたい助け船。散らばっていた皆がオールマイトの元に集まったのをいいことに、何食わぬ顔で定位置になりつつある焦凍の右隣に立った。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」
「いいや、もう二歩先に踏み込む。屋内での対人戦闘訓練さ!」
屋内での対人戦闘訓練。対人ということは、クラスメイト同士で対人戦闘をすることになるのかな。昨日の個性把握テストで少なからず皆の個性は見た。大丈夫、散々エンデヴァーさんにしごかれているんだ。しっかりやれるはず。
「ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売……このヒーロー飽和社会、真に賢さかしいヴィランは闇に潜む。君らにはこれから"ヴィラン組"と"ヒーロー組"に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう。」
「基礎訓練もなしに?」
蛙吹さんの疑問にオールマイトはぐっと握りこぶしを作り「その基礎を知る為の実践さ!」といつもの笑顔で言う。
「ただし、今度はぶっ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ!」