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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第2章 入試試験


「……きろ。おい、起きろって。」
「ん……」

 ゆさゆさと体が揺さぶられた後、暖かいものが私の頬を撫でるのを感じて意識が夢から現実へと引き戻される。寝ぼけて少し霞む視界いっぱいに映る綺麗なグレーと青みがかったエメラルドグリーンの瞳、そして整った顔を認識して漸く私の頭が状況を把握した。

「焦凍、近いよ……。」
「奏がなかなか起きねぇのが悪りぃ。」

 寝起きが悪いのは謝るけど、鼻と鼻が触れあいそうな程近付けるのと上に乗っかってくるのは色々心臓に悪いからやめて欲しい。私に負担がかからないようにしながら覆いかぶさった体をぐいぐいと両手で押して退いてと主張すると私の幼馴染で、一応許嫁でもある轟 焦凍はゆっくりと身体を上から退かした。

 私と焦凍の付き合いは4歳の頃からと随分長い。特に色々事情があって轟家に引き取られた後からは、焦凍と一緒にめちゃくちゃ厳しい訓練を乗り越えてきただけあってお互いの距離がそこらへんにいる兄弟なんかよりも近かった。そんなだったから、恋心や下世話な話が気になりだす小学校高学年の頃、私と焦凍は恋人同士であるとよく噂されてしまっていた。
焦凍はもの凄く顔がいい、所謂イケメンだ。人当たりはいい方ではないものの、それもまたクールでかっこいい!と女の子達から大層モテた。そんなモテモテな男の子に、恋人かといわれるくらい距離の近い女の子がいたらどうなるか?当然、目の敵にされる。しかも、恋人でもなくただの幼馴染と聞いて更に敵が増える。学校中の女の子を敵に回したその時に、漸く私は焦凍との距離が近すぎるのだと理解した。理解すると同時に、私が焦凍に抱く気持ちも理解してしまったのだけど……それは隅にでも置いておこう。
とにかく、それからは男女でこの距離感はいけないと私は離れる意思を見せたし、焦凍に説明もした。したけど……御覧の通り。学校ではまだましな距離感になったものの、家での距離感は全く変わらなかった。

「今日受験だろ。寝坊するなんて珍しいな。……なんか、あったのか?」
「最後の追い込みでちょっと寝るのが遅くなったからかな。焦凍が心配してるような事じゃないから大丈夫だよ。」

 
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