第2章 入試試験
深く、深く……深海へと沈み込んでいくような感覚。個性を使った日には必ずこの感覚がして、同じ夢を見る。
目を開けると私は赤い席がぐるりと埋め尽くす大きな音楽ホールにいる。たくさん席はあるくせに、視聴者はだれもいない。寂しい音楽ホールの舞台、その中心に騎士みたいな胸プレートと白いマントをつけた私が指揮者のように剣を振っている。
ねぇ、私を見て。私、ここにいる。
騎士の私を見たとたん、唐突に胸を割いてしまいたいほどの痛みに襲われて涙が浮かぶ。物理的な痛みでじゃない。ただただ、哀しくて、寂しくて、苦しくて、叫んでも聞こえない慟哭に溺れる。そして私は衝動に、慟哭に、突き動かされるように彼の名前を言おうと口を開く。
「」
名前が紡がれるその前に、私の首は私に刈り取られた。