第4章 波乱の個性把握テスト
治癒力を上げようと決めたのはいいけど、爆豪君が喧嘩を売りに行ったり、相澤先生が爆豪君の個性を消して捕縛したり、相澤先生がドライアイというもったいない事実を暴露したりと、なかなかタイミングがやってこない。挙句の果てには次のテストの準備をしろと言われる始末。もう、残るチャンスは移動する今しかない。無重力の麗日さんとお話ししているところで悪いけど、話しかけに行かないと。そう一歩踏み出したところで、私の肩を冷たい手が掴んだ。
「焦凍?」
「お前、あいつが気に入ったのか?」
そう私に問う焦凍の目は私の心を見透かそうとするように鋭く私を見つめている。一体、なにを……?私が左について何かしようとしているのに気が付いた?そんなにわかりやすい態度はとってないはず。とにかく、左について考えていることを焦凍にばれるのはまずい。何かを言うにしても、左のことだけは言わないようにしないと!
「ああいうガッツのある人、嫌いじゃないから……」
「じゃあ、何がかっこよかったんだよ?」
「え。あ、いや。だって個性が制御できてなかったのに一筋縄じゃいかなさそうな先生の評価を覆すようなことしたから。つい……」
「そうか。……悪かった。」
冷えた手が肩から離れていく。え、待って。もしかして、私が緑谷君にかっこいいって言ったから嫉妬したの?
焦凍の冷えた手の理由がわかってしまって、顔から湯気がでそうなほど熱があつまってくる。ああ、どうしよう……ごめんね、緑谷君。私、ちょっと焦凍から離れられそうにない。
やってしまった手前、気まずいのか私を置いて次のテストへ向かおうとする焦凍の背中に走って飛びつく。まだほんのり冷たい右手をぎゅっと握って、甘えるように肩をくっつける。
「奏、緑谷のとこ行くんじゃなかったのか。」
「今は焦凍と一緒にいたい。」
「学校じゃ距離を取ってないとダメなんじゃなかったのか。」
「焦凍が悪い。」
「……肩、冷たかったのか。悪かった。」
焦凍が冷やした肩を左で温めてくれる。勿論、そのつもりでくっついたわけじゃないから焦凍の対応はズレてる。ズレてるけど、また距離感の誤解が復活しても困るから、このままでいいや。