• テキストサイズ

人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第4章 波乱の個性把握テスト


 珍しく人を気にする焦凍に驚きながら緑谷君を観察する。ひたすら呟く内容は聞こえないし顔色だって悪い。先生の評価もゼロ……むしろ、マイナスいってるんじゃないかってくらい酷い状況。でも、緑谷君の瞳は死んでなかった。むしろ、逆境に燃えるようにぎらぎらと輝いて――
 緑谷君がぐっと大きく目を開いて前を睨む。力強くボールを握って振りかぶる。

「SMAAAAAASH!!!!」

 勢いよく振り下ろされた手から、ボールがロケットのように飛んでいく。とんでもない風圧と一緒に飛んでいったボールが落ちたのは705.3m。ヒーロー科に相応しい超人的な記録。ぐっと手を握り締めて緑谷君は相澤先生に向き直る。

「先生……まだ、動けます!」

 歯を食いしばる緑谷君の人差し指は紫色に変色し、腫れあがっている。指が、個性に耐えられなかったんだ。見覚えのある症状を見て相澤先生が緑谷君の個性を消したのにも納得がいった。緑谷君は個性の制御ができないんだ。
恐らく、個性は“筋力を増強する”個性。指一本で爆豪君と変わらない記録を叩き出したところを見るに、その力は他の増強系の追随を許さない程強い。デメリットは制御が難しく、失敗すると身体を著しく損なうということかな。最初は制御できないのを承知で、つまり身体の損傷を厭わず個性を使おうとしたから止められた。でも、指一本の損傷なら痛みを我慢すれば動くことができる。最小限の負傷で最大限の結果を。今、緑谷君は自分にできる精一杯で試練を乗り越えた。

「かっこいいじゃん。」

 諦めない人、私は嫌いじゃない。それに、間違いなく彼は相澤先生の評価を覆した。緑谷君、彼は焦凍の殻を壊す人になりえるかもしれない!
強い歓喜が身体中を駆け巡る。ああでも、確か彼の記録は今のところ平均かそれ以下のはず。あれだけの損傷なら痛みも酷いだろうし、それは緑谷くんにとってハンデになってしまう。それはいけない。彼にはこのクラスに残って貰わないと。大きな怪我を治すには向いてないけど、私の個性で治癒力を上げたら少しくらいあの怪我もマシになるかも。
/ 272ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp