• テキストサイズ

人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第4章 波乱の個性把握テスト


 結局、あの後私が緑谷君の怪我に個性をかける隙は一切なく、緑谷君は指が腫れあがった状態のままで全ての個性把握テストをやりきった。ただ、やっぱり痛みで記録は伸び悩んでいたみたいだし結果は最下位の可能性も高い。あの時の緑谷君の頑張りを相澤先生がどう判断するのか。それに全てがかかっていた。

「んじゃ、ぱぱっと結果発表。トータルは単純に、各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なんで、一括開示する。」

 端末から映し出された順位表を焦凍の隣で見つめる。私の順位は2位。創造の個性を持つ八百万さんと焦凍の間。流石になんでも作ることのできる個性は汎用性が高い。私が彼女に勝てたのは50m走と持久走の二つ。焦凍の隣に立つには、まだまだ頑張らないと。そして、肝心の緑谷君は――最下位。さて、どうなる?心臓の脈打つ音を聞きながら、先生の言葉を待つ。

「ちなみに除籍は嘘な。君らの個性を最大限引き出させる為の、合理的虚偽。」

 まるで授業が終わった後にぽんと宿題を出すような。そんな手軽さで、クラスにめちゃくちゃ重大なことを言い放った。充血した目でめちゃくちゃいい表情をした先生が言った一言を飲み込んで、脳が理解した一拍後。クラスの8割による大絶叫がグラウンドに響き渡る。最初から除籍するつもりはなかった?それとも考えを改めた?だめだ、どっちもありえる!

「お前、驚くことか?」
「いや、だってクラスから1人消えるとこだったんだよ?驚いてもおかしくないと思うの。」
「……そういうもんか。」
「もっと視野を広く持つ努力をしよ、焦凍……」
「人間の視野は120度だぞ。」
「んん、物理的な答え……」

 とりあえず、波乱万丈の個性把握テストは先生の解散の言葉で幕を閉じた。なんだか気疲れしてしまった身体を引きずって教室まで戻る。教室にはカリキュラムやら色々な書類が用意されていたから、それに一通り目を通す。そして、全部鞄にしまったら、もう下校する時間。本来なら入学式に出てガイダンスを受けて終わりだったはずの入学初日は、私達に”雄英とはぶっ飛んだ学校だ”という印象を与える形で終わった。
/ 272ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp