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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第4章 波乱の個性把握テスト


 緑谷君は、険しい顔でボールを見つめて動かない。このままの記録だと、まず間違いなく緑谷君が最下位になる。それは本人も理解しているはず。それでも使わないのはためらいがあるから?焦凍を一瞬だけ見て視線を緑谷君へ戻す。青い顔をした緑谷君は覚悟を決めたように歯を食いしばり、ボールを振りかぶる。やっと緑谷君の個性が見られる。見逃さないようにその瞬間を観察しようと目を凝らした。振りかぶられた腕が勢いよく振り下ろされていく。そして――投げられたボールは、歯を食いしばった覚悟に反し情けない音を立てて地面に転がった。
おかしい。今彼は確かに何かを……個性を使おうとしたはず。実際、ボールを投げた手を絶望した顔つきで見つめる緑谷君の姿が発動しなかった個性に対するショックを物語っていた。

「今、確かに使おうって……」
「個性を消した。」

 生徒達の後ろで記録を取っていたはずの先生がゆっくりと前にでて緑谷君に近づいていく。個性発動の影響か、先生の髪は逆立ち布は重力に逆らうようにばらりと浮いている。“個性を消す”個性って……個性社会の現代じゃもの凄く強い個性。その個性を使って、緑谷君の個性を消した。でも、何のために……?私の疑問に誰かが答えるわけもなく、目の前の出来事は進んでいく。

「つくづくあの入試は合理的に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう。」
「個性を消した……?あのゴーグル……!そうか、見ただけで相手の個性を抹消する、抹消ヒーロー・イレイザーヘッド!」

 抹消ヒーロー・イレイザーヘッド。担任教師のヒーロー名が明らかになり、生徒がざわつく。名前を聞いたことがあるという蛙吹さんが言うには、彼はアングラ系ヒーロー……つまり、メディアへの露出を嫌っているヒーローらしい。
じっと相澤先生と緑谷君を観察してみるものの、二人が何を話しているのかは全く聞こえない。ただ、緑谷君が先生の布に捕縛され、凄まれている姿を見るにいい話ではなさそう。十中八九、個性を消した理由について話をしていると思うんだけど……気になる。相澤先生は暫く会話を続けると、個性と布の拘束を解いて緑谷君から距離を取った。解放された緑谷君は酷い顔色をしながら下を向いて何かを呟いている。

「……何話してたのかは知らねぇが、あいつダメかもな。」
「そうだね。相澤先生の評価を覆すのは難しそう。」
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