第4章 波乱の個性把握テスト
宙に飛んでしまえば運動エネルギーを増加させるだけでどんどんスピードを上げられる。だからこそ、私は空中戦での高速戦闘が行えるように体幹と動体視力をこれでもかというほどに鍛えてきた。目下の課題は個性を使うためのエネルギー上限を引き上げること、もしくはもっと低燃費に個性を使えるようになることかなぁ。
頭でこれからのことを考えながら、私の個性を整理する飯田君の話を聞く。
「ふむ……そうなると、君が記録をだせるのは持久走と立ち幅跳びか。」
「そうだね。あとは握力を人魚姫に任せるくらいかなぁ。大きいから私より力でるし。」
そんな調子で飯田君と話していると、あっという間に全員の記録が取り終わる。次は握力。全員で体育館に移動して握力計を握る。握力は人魚に筋力強化をかけて頑張ってもらったけど100ちょっと。決して低くはなかったけれど、他の子に比べたら霞んでしまう記録になった。
その後のテストは、皆個性を使って大記録を出したり出さなかったり。記録はすごいものが多くても、それが出せる個性だったから特に特筆するようなことは起こらなかった。私の記録も、想定していた以上のことはない。立ち幅跳びは、人魚の手に乗って運んでもらうことで距離は∞を記録。反復横跳びは一度地面に足を着かなきゃいけないから普通。一応皆の観察もしてみたけれど、個性の使い方がおもしろいなって思うのはヤンキー君ならぬ、爆豪君くらいだった。でも、彼の性格上気の利いたことはできそうにないから私の目的を果たしてくれそうにない。まだ一日目で皆のことを知ったわけではない。それでも、正直このクラスに飽きを感じ始めていた。そして……次は私がやったソフトボール投げになった。
皆が一人ずつボールを投げていくのを焦凍の隣でぼんやりと見つめる。自分の出す記録に一喜一憂していく中、一人顔色が悪いまま円へと入っていく。気弱な男の子、確か名前は緑谷君だったはず。
「そういえば、まだ個性使ったところ見てないね。」
「そうだな。」