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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第4章 波乱の個性把握テスト


 挑発するように、先生は長い髪をかき上げて人差し指をくいくいと動かしながらそう言った。それは談笑し、テンションが上がって浮かれきっていた生徒達を本気にさせるには十二分で皆目に闘志を宿した。勿論私もその内の一人。皆がどんな個性を持っていようと構わない。私はすでに切り札を出した。もう個性によるエネルギーの消費を考える必要はないのだから、私はただ全力をだせばいい。今、入学式をすっぽかして個性把握テストの幕が開けた。

――第一種目、50m走

 用意されたレーンは2つ。二人一斉に走ってそのタイムを記録していく。最初に走る二名が先生に呼ばれ、準備を始めている。最初は優等生……いや、飯田君と蛙吹さんの二人。飯田君はジャージの裾をたくし上げてふくらはぎを露出させる。すると、がっしりと鍛えられたふくらはぎに筒のようなものが生えているのが見えた。

『位置について、よーい……ドン!』

 観測用ロボットがスタートを告げると同時に二人が一斉に飛び出す。飯田君のふくらはぎから勢いよくガスか何かが噴出され、凄いスピードで走っている。なるほど、彼の個性は“エンジン”……非常にわかりやすい。ロボットの告げた記録は3秒04。いいタイムだ。普通に考えるなら、飯田君がこの種目ではトップを取る。けど……

「高速戦闘を得意とする私が負けてちゃ、世話がないよね……」

 自分の番が来るまでにしっかりと身体をほぐしておく。一瞬たりともミスはできない。目指すはトップ!

「次、至情と障子。」

 呼ばれてレーンの方へと移動する。隣は6つの腕を持つ異形型の男子。ひとこと障子君によろしくとだけ伝えてクランチングスタートの姿勢を取る。それと同時に私のレーンには運動エネルギーを増加するための円を、両足には生命エネルギーを増加させる円をそれぞれ浮かばせる。

『位置について、よーい……ドン!』

 響き渡るピストル音と同時に斜め上方向へ飛ぶように地面を蹴る。ジャンプした瞬間に人魚姫に足元へ足場を作るように個性をかけさせる。その足場を強く蹴って、空を滑るように飛ぶ。ジャンプするのと空を蹴るので1秒。そこからトップスピードに乗った私の身体がレーンに浮かべた円を通過する度にエネルギーは増加して、ひたすら加速させ続ける。

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