第4章 波乱の個性把握テスト
「おいおい、どこまで飛ぶんだよ……もう見えねぇぞ。」
青い軌跡を散らしながら飛んで行ったボールは、もう私の視界からは消えてしまった。”エネルギー操作”の範囲は視認。その条件は人魚姫にも適用される。円から出ない範囲で人魚姫にボールを見させ、個性をかけさせてはいるものの……そろそろ限界のはず。しばらく待っていると、先生の持つ端末からピコンと音が鳴る。
「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」
表示された記録は1000.5m。普通の体力テストじゃ決してでることのない数値。個性を使い、凄い記録をだせるという事実に皆が驚き、歓声を上げる。
「1000って、キロいってんじゃん……まじかよ。」
「何これ、おもしろそう!」
「個性思いっきり使えんだ!流石ヒーロー科!」
湧き上がるテンション。冷静な子もいるものの、殆ど全員が一様に浮かれていた。それと反比例するように先生から冷気のようなオーラが漂い始めているのも知らないで。後ろから皆を見ていた私にはわかる。今の状態は、まずい!
「……おもしろそう、か。ヒーローになるための三年間。そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」
先生の冷ややかな声に、ようやく異様な雰囲気を感じ取ったらしい生徒が騒ぐのをやめる。それでも、先生から流れてくる不穏なオーラは収まらない。
「よし。八種目トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう。」
告げられたのは、あまりにも理不尽な言葉。せっかく倍率300を越えて雄英に合格したのに、このクラスから1人名簿から消し去ろうというのだ。当然、生徒から驚愕の声が上がる。入学早々、あんまりにも理不尽だと訴える声を聞いて相澤先生は告げる。
「自然災害、大事故、そして身勝手な敵達。いつどこから来るかわからない災厄。日本は理不尽にまみれている。そういうピンチを覆していくのがヒーロー。放課後、マックで談笑したかったなら生憎。これから三年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。更に向こうへ、“Plus Ultra”さ。全力で乗り越えてこい。」