第4章 波乱の個性把握テスト
そう言い放つと、相澤先生の充血した目がクラスを見渡し……私を捕らえる。え、なんだか嫌な予感がぬぐい切れないのだけれども。思わず一歩後ずさると焦凍の肩にぶつかった。
「実技入試テストのトップは至情、お前だったな。中学の時ソフトボール投げ何mだった?」
実技入試トップ、その言葉で周りの視線が私に集まるのがわかる。特に刺々しい視線を向けてきているのは、あのヤンキー君だろう。居心地の悪さを感じながらも自身の記録を先生に明かす。記録を聞いたヤンキー君が鼻で笑うのが聞こえたけど、鍛えているとはいっても私は女子だからね!?どれだけプライドが高いの……エベレストかな?
私の記録を聞いた相澤先生の表情は特に変わらない。淡々と私に向かってボールを差し出し、告げる。
「じゃあ、個性使ってやってみろ。円から出なきゃ何したっていい。はよ。」
差し出されたボールを受け取り、仕方なしにボール投げの円に入る。全員に実技入試のトップというフィルターのかかった目で見られながらのテストって、緊張しちゃうな。でも、“円から出なきゃ何したっていい”か。鼻で笑ってくれたヤンキー君も見ていることだし、ちょっと本気ださないと気が済まない。
「先生、二つほど質問してもいいですか。」
「なんだ。」
「発現させた個性を出したままにしたいんですけど、よろしいですか?もう一つは、その個性を円の外に出すのはダメでしょうか?」
私の質問に、少しだけ先生が考える動作をする。私の個性をすでに担任である相澤先生は把握しているはずだから言いたいことは伝わっているはず。そして、これが許されるか許されないかで私の記録は大きく変わる。許可がでるとありがたいのだけど。
「……一つ目は許可する。」
「わかりました。おいで、”人魚姫”。」
私の声に従って核石に私の感情の写しである人魚の影が映る。そっと右手を掲げれば核石から影が溢れ、徐々に無骨な鎧を纏った巨大な人魚の姿を形作る。
「なんだ、アレ!」
「でかい人魚……?」
その声をよそに、人魚姫に指示をだしてその大きな腕へエネルギー増加をかけさせる。反動が起こらない程度に重ね掛けし、人魚姫にボールを握らせ思い切り投げさせる。ボールが手を離れた瞬間から連続してボールへと個性をかけ続けるよう指示すれば、ボールはさらに加速して空へ、空へと駆け上っていく。