第4章 波乱の個性把握テスト
担任の相澤、そう名乗った彼を見て教室にざわめきが広がる。雄英の教師は全てプロヒーロー。つまり、あの人もそう。とてもじゃないけれどプロヒーローには見えない担任に驚くのは仕方のないことだった。それを知ってか知らずか、ひとつも表情を変えない相澤先生は寝袋からジャージを取り出して前に突き出す。
「早速だが、ジャージ着てグラウンドに出ろ。それぞれ机の引き出しに入ってる。」
ジャージを着てグラウンド……?貰った案内ではこの後すぐに入学式があるはずなのに。けれど、担任である先生が言うことだ。皆釈然としないながらも机の引き出しからジャージを取りだす。男女交代で教室に入ってジャージに着替えると、戸惑いながらもグラウンドへと向かった。
――
「個性把握テスト!?」
グラウンドに出るなり聞かされた言葉に、クラスの殆どが驚いて声を上げた。ちらりと時計を見ても、もう入学式は始まっている時間。一体、どういうつもりなのか。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ。」
クラス皆の疑問であろうそれは、相澤先生の気だるげな声に一蹴された。ヒーローは、要請があればすぐに飛び出していかなくてはならない。何度か緊急要請を受けて家から飛び出していくエンデヴァーさんを見ているから知っていることだけれども……まさか、学生の内からそういうことを求めるなんて。
それに、個性把握テストというのにもいまいちしっくりこない。個性届けはすでに学校にも提出しているんだし、先生達が私達の個性を知らないはずがない。表情を読もうにも、まったくの無表情で全然何を考えているのかさっぱりわからない。この先生、なんだか一筋縄じゃいかなさそうな気配を感じる。
「雄英は自由な校風が売り文句。そして、それは先生側もまた然り。」
先生はそう言いながら手元の端末を操作し、私達に向けてその画面を見せる。そこに書かれていたのは、ボール投げ・立ち幅跳び・50m走・持久走・握力・反復横跳び・上体起こし・長座体前屈。それぞれ体力テストでやったことのある項目だった。
「お前達も中学の頃からやってるだろ。個性使用禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だな。」