第20章 期末テスト、その前日譚
「おおお、緑谷!?何だその動きィ!!?」
予想外の展開、そして一週間での変わりように皆が騒めく。腕で、身体で、バランスを取りながら駆ける姿は、まるで爆豪君の動き方だ。けど、うーん……目が追いついていないのかな?飛ぶ先への注意が甘くて、危なっかしい。また、時間ある時に訓練に付き合ってあげた方が良いのかなぁ……。
あの飛び方、いつ修得したんだろ?気になるのは、焦凍がそういえばそうだ、みたいな顔をしていること。……もしかして、ステイン戦ではあんな動きがもうできてたとか?……私、あの時皆の戦い見れてないのよね。背中向けて動けなくなったし。
自分の情けない姿を思い出し、膝をついてしまいたくなる気持ちをグッと堪える。すると、やっぱり案じていた通りに緑谷君は足を滑らせ――落ちた。そのミスが響き、結果として1組目は瀬呂君が1位を取って終了した。
次は、私達の番だ。オールマイトが2組目に呼びかけるのを聞いて、立ち上がる。
「奏、負けんなよ。」
「当然!だって、焦凍の相棒ですから。」
ニッと強気に笑みを浮かべると、焦凍が満足そうに口元を上げて私の頭を撫でる。そして、行ってこいと背中を押した。さぁ、勝負だ爆豪君!
案内された開始位置につき、念入りにストレッチを行う。周りは高い壁ばかり。まずは高く飛び上がって、上空を飛ぼう。いつ合図がなっても良いように、足に“エネルギー操作”をかけて、いつでも飛び上がれるように姿勢を取る。そして――
「START!!!」
大きく響いた合図に弾かれるように駆け出す。空まで伸ばした青い円に飛び込み、一気に風をきって空へと飛び上がる。宙返りを一つして、足場を蹴って前へと跳ぶ。うん、絶好調!
青い円を散らし、加速しながらオールマイトの姿を探していく。そして、後方から聞こえてくる爆発音。