第20章 期末テスト、その前日譚
オールマイトの説明によると、今日は救助訓練レースを行うらしい。なるほど、どこにいるかわからないオールマイトを探していち早く駆けつけろと。なるほど、私や爆豪君、瀬呂君のような滞空性能の高い人が有利、と。パワーを試すことができないのは残念だけど、それは仕方がない。そして、普段私の強みが活かせる訓練であるからこそ油断はできないし、負けるわけにはいかない。
耳をすませ、組み分けを聞いていく。私は――2組目。しかも、爆豪君と一緒。
ちらりといつかの体育祭の時のように爆豪君を見る。すると、ビッと親指を下に向けられる。酷い、けど私だって得意とする分野で負けるつもりはない。逆にベーっと舌を出して挑発を返す。すると、嗜められるように焦凍の手が私の右手を引く。
「奏、爆豪と遊んでないで行くぞ。」
「遊んでねぇわ、半分野郎!」
「爆豪には話を振ってねぇ。」
爆豪君が焦凍の近くまで来てギャンギャン突っかかるのを無視しながら、焦凍待機場であるOZASHIKIまで手を引く。まるで狂犬のように突っかかる爆豪君を切島君に引き取ってもらい、私と焦凍は爆豪君達から距離をとって座る。見上げた大画面には、位置についてストレッチをする1組目の皆が映っていた。
レースとなれば、当然始まる順位予想。人気はやっぱり機動力で名前が上がる飯田君と瀬呂君。そして、一番人気がないのが実力の定まらない緑谷君。加減を知って、無茶をしなければ身体は壊れなくなったけど、飯田君と同じで地面を走るなら不利だよねぇ。
大きな開始の合図が響いて、皆が一斉に走り出す。その中で、やっぱり瀬呂君がいち早く空へと飛び上がっていく。予想通りの展開だし、自分のことを考えよう。そう思った時だった。
瀬呂君を、緑の影が追い抜いていく。緑谷君だ。ぴょんぴょんとアクロバティックな動きでパイプやタンク、屋根を足場に空を駆けていく!