第20章 期末テスト、その前日譚
「大丈夫か、奏。」
「ん、大丈夫。ちょっと嫌なこと考えちゃっただけだから。」
上鳴君の言葉に怒ることなくヒーロー殺しの考えを認めた上で間違いを指摘し、改めてヒーローの道を進む!と力強く宣言している飯田君の姿をちらりと横目で伺った後、小声で焦凍が私を気遣う。その優しい声色がこわばていた身体をそっと解いていく。本当は隣に座ってその肩に寄りかかってしまいたいけど、ここは教室だから流石に恥ずかしい。だから、また後で2人きりの時に甘えさせてと小声で伝える。すると、焦凍は小さく頷いた。
「さァそろそろ始業だ、全員席につきたまえ!!」
「五月蝿い……」
「上鳴が変な話すっから……」
「なんか……すんませんっした。」
いつもよりもフルスロットルな飯田君の姿と大声に、皆が小さくブーイングするのを聴きながら私は焦凍の手をそっと離して席に着いた。
――
そして、やってくる皆大好きヒーロー基礎学!職場体験で得た経験を活かせると、皆浮き足立っているのがわかる。私もエンデヴァーさんに教えて貰ってパワー不足も解消できたことだし、これがどのくらい通用するのか、早く試してみたい。
コスチュームに着替え、やってきたのは運動場γ(ガンマ)。複雑に入り組んだ、密集工業地帯を模した場所。今日の訓練内容はなんだろう?戦闘訓練ならありがたいんだけれどなぁ。
「ハイ。私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどね、ハイ。ヒーロー基礎学ね!久しぶりだ、少年少女!元気か!?」
皆が集合して待っていると、いつも何かしらのジョークを挟むオールマイトがさらっとお決まりのセリフを口にしながら入ってくる。あまりにもあっさりしていたためか、皆が口々にネタが尽きたのかと容赦なくツッコんでいくのに対して無尽蔵だっつーのと反論しながら授業は進む。