第20章 期末テスト、その前日譚
「俺ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺し敵連合ともつながってたんだろ?もしあんな恐ろしいやつがUSJきてたらと思うとゾッとするよ。」
「そうだね。いたら厄介だったし、もっと大変な事態になってたかも。」
尾白君の意見は尤もだ。血を舐めることで相手の動きを止める個性を使われていたら、脳無に抵抗もできずにやられていた。逆に言い換えれば、あの子供のような死柄木があのヒーロー殺しを隠すようなことするだろうか?脳無をチートだと言って嬉しそうに出してきたのに。いや、そんなことする性格じゃない。なら、ヒーロー殺しと繋がったのは雄英襲撃後だ。
雄英を襲撃した敵連合の名前はニュースで大々的に報道されていた。当然敵もニュースを見ているだろうし、裏で話題にあがるのもおかしくない。知名度でヒーロー殺しという大物と繋がれたなら、この事件では?更に多くの悪意を引き寄せるんじゃないの?
嫌な考えが頭をぐるぐると回って気持ちが悪い。焦凍が私を気にしてそっと右手を握って核石に触れるのを感じて縋るように指を絡める。
「でもさあ、確かに怖えけどさ。尾白も至情も動画見た?アレ見ると一本気つーか、執念っつーか……かっこよくね?とか思っちゃわね?」
意見とは裏腹に、少し上擦ったような声色で上鳴君が話す。
私と焦凍もその動画は見ている。ヒーロー殺しがヒーローに向ける執念は並々ならないものがあり、そして主張もわからなくはないものだった。だからこそ、人を強く惹きつける。上鳴君のようなヒーローに憧れている人だってこうして影響を受けるのだから、自分の欲に、衝動に素直な敵なら……もっと、恐ろしいことが――
「上鳴君!」
緑谷君の上鳴君を嗜める大声がぐるぐる回る思考を止める。気づかないうちに息まで止めていたのか、クラクラする。
大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。――止めよう。私がここで考えたって仕方のないことだし、何よりヒーローがこの事態を憂慮していないはずがない。
エンデヴァーさんの事務所で見たプロファイリングを思い出し、不安を追い払うように小さく頭を振る。