第20章 期末テスト、その前日譚
焦凍も無事に退院し、一緒に職場体験の続きを経験して数日後。今日は久しぶりの登校日だ。焦凍と一緒に冬美さんに見送られながら2人手を繋いで通学路を歩く。
焦凍から告白されたあの日、私達の関係性に新しく恋人という名前がついた。それで、何かが変わったのか、と言われればあまり大きくは変わっていない。ただ、無理に焦凍から距離を取ることはなくなった。幼馴染としては普通じゃなかった距離感も、恋人となった今ならバカップルで許される。……いや、バカップルと言われて嬉しいかと言われると恥ずかしい。けど!大事なのはその行為が許される範囲にはいったということだ。
今も焦凍と手を繋いで歩いていることで、微笑ましく見守る視線と、羨ましがる嫉妬の視線がグサグサと刺さる。けれど、もう簡単に引かない。私だって、焦凍を私の恋人だと言いたいのだから。だから、そっと繋ぐ手に力を込めた。
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久しぶりの1Aの教室は、廊下に漏れ聞こえるほど明るい声で溢れていた。皆が楽しげに話す内容は、当然経験してきた職場体験。行った先で楽しい経験をした人、新しい見識を得た人、新しい技術を得た人……などなど、様々だ。
私と焦凍も、あの日病院で更に仲良くなった緑谷君と飯田君を交えて楽しく談笑する。それにしても、本当に緑谷君の考察やプロヒーロー談義はためになる。私達が体験先で出会ったヒーローについて話を聞いていると、上鳴君の明るい声がヒーロー殺しの話題を振り、必然的に私達4人に視線が集中した。
皆がそれぞれ心配したと話かけてきてくれるのが嬉しくて、笑みを浮かべてお礼を返す。その中で、「流石No.2ヒーローだ」という話題もでた。コレには肝を冷やしたけれど、焦凍も助けられた自覚があるようで、素直に助けられたと返したことにホッと小さく息を吐いた。