第19章 伝え合う熱と、心
身体中に響きそうなくらい跳ねる鼓動を聞きながら奏の顔を見る。その顔は血の気が引いたように青く、強張っていて……今にも泣きそうだ。俺の顔、そんな怖がられるよな話をするように見えてたか?
そんな顔をして欲しくなくて、向かい合うために離れていた距離を縮めて手を握る。
……手、冷てぇ。左に熱を込めて摩りながら口を開いた。
「奏、落ち着けよ。何も怖い話をしようってんじゃねぇ。」
「でも、私達の関係についてって……私のこと、嫌になったんじゃないの?」
「そんな訳がねぇ。もし仮にそうだったとしても、無理矢理隣に座らせたりはしねぇよ。」
「……無理矢理って自覚はあったのね。」
少し落ち着きを取り戻したのか、奏が小さく息を吐いて甘えるように俺の肩に額を寄せる。声だけじゃ上手く察せられねぇから顔を見て話したかったんだが、仕方ねぇ。そっと背中に手を回して、ぐっと抱きしめる。
「なぁ奏、俺はお前のことが好きだ。」
「しょう、と?それって、その、家族としての好きじゃなくて……?」
「違ぇし、ただ隣に居させたいって独占欲でもねぇよ。俺は、お前が異性として好きだって言ってんだ。キスだってしてぇし、その先だってしてぇ。いつだって何処かに触れていたくて堪らねぇ。だから、互いに頼って、頼られて、そしていつだって心が側にある。そんな関係になりてぇ。
俺は幼馴染とか許嫁なんて関係じゃなくて、奏と恋人になりてぇんだ。」
気づくまでに随分と時間がかかっちまった。けど気づいていなかっただけで、きっとずっとそう思ってた。
上手く言葉にできるような質じゃねぇ。けど、この心に灯る熱の1つでも伝わっていて欲しい。そんな想いで抱きしめて、じっと返事を待つ。すると、奏の手が俺の背に回って弱々しい力で服を掴んだ。
「……私で、いいの?」
「奏がいいんだ。ずっと俺の側にいて、支えてきてくれたお前だから好きなんだ。」
肩口から奏が息を呑む音が聞こえる。弱々しく服を握っていた手に力が入って、そしてもっと強く額が当てられる。どくりと鼓動が高鳴って、隙間ひとつ作りたくなくなった俺は、身体を寄せて強く抱きしめる。互いの熱が、鼓動が伝わる。