第19章 伝え合う熱と、心
「しかし、轟君と至情君は仲が良いな。同じ中学出身だと、そうなるものなのかい?」
「んっ、いや、焦凍とは幼馴染だから」
そういえば、とでも言うかのようにいきなり飯田から飛んできた質問に奏が慌てふためく。距離が近い、仲が良い。そう言われた時は幼馴染だからだって誤魔化してきたのは知っているし、一番波風立てない理由だってわかってるから許嫁だって言いたい気持ちを飲み込んできた。けど、抱えた気持ちに気づいちまった今はもうそれだけの関係じゃあ満足できねぇ。なら、どうするか。答えは、ひとつだろ。
「……わりぃ飯田、緑谷。ちょっと奏と話があるから席外す。」
「え?焦凍?」
立ち上がり、戸惑う奏の右手を引いて、快く送り出してくれる緑谷と飯田の声を背に病室を後にする。……あとで、2人に礼を言わねぇと。
奏の手を引いたまま、人気のない場所を探して歩く。屋上は扉が閉まっていて出れねぇが、その分人も来ないはず。屋上に続く階段の踊り場で奏の手を掴んでいた手を離し、息を吐いてゆっくりと向かい合う。
「焦凍、話って?」
「……俺と奏の関係についてだ。」
俺との許嫁の関係を奏は好都合だと言ってくれていたし、俺のことをずっと好きだと言ってくれていたし、許嫁の関係にも好意的だった。けど、それが異性に対する好きなのか、特別な関係を求める独占欲なのか、俺は察することができてねぇ。
もしかしたら、俺が想いを伝えることで関係を壊しちまうのかもしれねぇ。それが嫌なら、許嫁だって言うだけでも牽制にはなる。けど、それじゃあ奏の気持ちを無視して、俺だけの気持ちでお前を縛りつけちまう。そんな一方的な関係は嫌だ。俺は、奏とちゃんと想い合いたい。