第19章 伝え合う熱と、心
一番下っ端なのに……と戸惑い、エンデヴァーさんの近くにいたサイドキック、バーニンさんに目を向ける、するとニッと笑って私の背中を強く音がするほど叩く。
「学生が遠慮しない!気になってるんでしょ?行っておいで。」
「あ、ありがとうございます……!」
つんのめりながらもお礼を言い、エンデヴァーさんとバーニンさんに一礼して背を向ける。すると小さく呼び止められ、振り返る。
私が止まったのを確認したエンデヴァーさんがゆっくりと私に近づいてくるのをじっと目で追った。
「見舞いに行くのに手ぶらじゃなんだろう。適当にこれで何か買って行ってこい。」
言葉と共に差し出された手に、反射的に手を差し出す。手の上にぽん、と置かれたのは数人の諭吉。
……多くない?バーニンさんもあちゃーって顔してるよ?
それに気づいていないエンデヴァーさんは、真面目な顔で「あそこの羊羹……いや、饅頭のほうが手が汚れず、食べやすいか」とおすすめのお店を上げていく。
和が好きなエンデヴァーさんだから仕方ないかもしれないが、今時の高校生は洋菓子の方が好きだと伝えようとして、ふと気づく。もしかして、焦凍のために選んでる?
……今思い返せば、パトロール中にも美味しいお店に焦凍と私を連れて寄ろうとしていた。パトロールも、焦凍と私を連れて色々見せてくれた。……本当はずっと焦凍と仲良くなりたかったの?
私が覚えているエンデヴァーさんは、いつも怖い顔をして焦凍に厳しい訓練と左の炎の強要をしていた。焦凍を守れと言われた時、最高傑作を守れと言われたんだと思っていた。焦凍や私のことなんて都合の良い人形のようにしか見ていない、血も涙もない人だってずーっと思っていた。
長い間轟家にお世話になっていたけど、今初めてエンデヴァーさんが息子と仲良くなろうとする不器用な父親に見えた。