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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第18章 恋心の自覚


「ふふ、ごめんね轟君。そう拗ねないでよ。」
「今まであまり俺達と関わろうとしていなかっただろう?だから、少し意外でな。」
「……。」

 確かに、今まで人と関わってこなかった奴が急に話すようになったんだ。驚きもする、のか?よくわかんねぇ。……ちょっと待て。そう考えると、あんまり話したこともねぇ奴から急に相談までされたことになんのか、飯田は。やべぇ。なれなれしいと思われてもおかしくねえんじゃねぇか?

「わりぃ。なれなれしかったか?」
「いいや、嬉しいよ。轟君さえよければ、このまま友人として仲良くなりたいと思っている。」

 そう朗らかに笑う飯田を見て少し安心する。友達か……。俺の初めての友達は、緑谷だ。体育祭の後からよく話すようになって、飯田や麗日がいない時は奏と三人で昼を食べたりもする。……あ。そういえば、俺も緑谷も飯田みてぇに友達になろうとは言ってねぇ。これは友達って言っていいのか?

「緑谷……。」
「え、どうしたの轟君。なんか、凄い眉間にしわよってるけど……。」
「俺とお前って、友達ってことでいい……のか?」
「えっ。」

 緑谷の大きな目が更に見開かれ、病室の空気がまた固まる。綺麗な緑色の目が徐々にじわりと潤み、まずいと思った時には緑谷がどんよりと暗雲を背負って項垂れた。

「……そっか、友達だって思ってたの僕だけだったのか……。」
「あ、いや、俺もお前のこと友達だって思ってる。ただ、俺もお前も友達になろうなんてひとことも口にしてなかっただろ。」
「へ?あ、そういう……」

 轟君、真面目だなぁと言って胸を撫で下ろす緑谷は、さっきまでショックを受けた表情から一転してほんわりと笑っている。すげぇころころ表情が変わるな……。こいつの表情筋ってどうなってんだ?

「友達になろうって言ってなくても、友達って思えるくらい距離も近かったんだから友達ってことでいいんじゃないかな。気になるなら、その……改めて友達になろうよ。」

 照れたように頬をかいた緑谷は俺に向かって歪んでしまった右手を差し出す。そうか、もう友達ってことでよかったんだな。奏の言う通りだな、なんて思いながら差し出された手を取る。
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