第18章 恋心の自覚
「……飯田君。僕も、同じだ。一緒に強く……なろうね。」
「ああ。」
そう言って、緑谷は歪んだ右手を飯田に掲げる。俺との戦いで無茶をして歪んでしまった右手……。体育祭の後、右手について謝ったら緑谷は慌てて俺のせいじゃないと言ってきた。“我儘を通して無茶をした僕の責任なんだ”と困ったように笑ってた。
そこまで思い出して、ふと気づく。なんか……俺と関わった奴、手をダメにしてねぇか?呪いなら、早めに神社に行かねぇとやべぇ……。
「なんか……わりぃ。」
「何が?」
「俺が関わると……手がダメになるみてぇな、感じになってる……。呪いか?」
真面目にそう思って口にしたつもりが、何かおかしなことを言ってしまったかのように空気が凍り、そして二人が堪えきれなくなって笑いだす。
「あっははは!何を言っているんだ!」
「と、轟君も、冗談言ったりするんだね。」
二人とも笑ってるけど、本当にそんな軽く考えていいのか?本当に呪いかもしんねぇんだぞ?
「いや、冗談じゃねえ。ハンドクラッシャー的存在に……」
「「ハンドクラッシャー!!!」」
とうとう腹を抱えて笑い出した二人を、唖然と見つめる。……俺、そんな変なこと言ったか?ヒィヒィと腹を抱えて笑ったせいで、緑谷がヒーロー殺しに斬りつけられた足を床に着く。結構な深手だったし、相当痛かったんだろ。痛ったぁ!?と大声で叫んだ癖してそれすらおかしく思えているのか、笑いが止まる気配がない。
「ふっ……だ、大丈夫かい、緑谷君……っ」
「だ、大丈夫、だよ。」
「……いい加減、笑うのを止めろよ。」
暗い雰囲気が吹っ飛んだのはいいが、だからって笑われるのは面白くない。フラフラと自分のベッドへ戻っていく緑谷を視界の端に捉えながら唸るように咎める。罪悪感なんて、抱くだけ無駄だったな。