第18章 恋心の自覚
「と、轟君!燃えているぞ!落ち着くんだ!」
「お。」
飯田に言われて左から炎が漏れていたことに気がつく。通りで熱いはずだ。個性のコントロールが効かなくなるのは、やべぇ。テンパりすぎだろ俺。
「……その、悪かったな飯田。」
「いや。その様子だと、答えはだせたのかい?」
「ああ。……ありがとな。」
「役に立てたのならよかった。」
目を合わせるには少し恥ずかしすぎて、逸らしながら礼を言う。飯田は気にしていないのか、それとも気を使っているのか、声色はとても明るかった。片手で顔を覆って、ため息を吐く。ああ、あちぃな。
顔の熱が引いてきた頃、カラリと扉が開く。その音で顔を上げると、緑谷がふんわりと頬を緩ませながら病室に入ってきた。何か嬉しいことがあったんだろう。それを共有しようと話しながら危なっかしい手つきで松葉杖をつく緑谷に声をかけると、不思議そうな顔をして俺を見た。
「飯田、今診察終わったとこなんだが……。」
「左手、後遺症が残るそうだ。」
後遺症が残ると聞いた緑谷は、俺と同じように表情を硬くする。お人好しでお節介な緑谷だ。そういう表情をするのはわかっていた。緑谷が戻ってきたってことは、詳しい話を聞けるってことだ。俺も、飯田の方を向いて静かに耳を傾ける。
「両腕ボロボロにされたが……特に左のダメージが大きかったらしくてな。腕神経叢という箇所をやられたようだ。……とは言っても、手指の動かし辛さと多少の痺れくらいなものらしく、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしい。」
よかった。治る可能性はあるのか。少しだけホッとしたものの、それだと飯田の表情が晴れない理由がわからない。
「ヒーロー殺しを見つけた時、何も考えられなくなった。マニュアルさんに、まず伝えるべきだった。奴は憎いが……奴の言葉は事実だった。だから、俺が本当のヒーローになれるまで、この左手は残そうと思う。」
「飯田……」
復讐心に囚われたことへの戒め、か。俺達を巻き込んじまったって随分気にしてたしな。俺も、多分緑谷も、巻き込まれたことなんかどうでもいいって思ってる。俺達のことなんて気にせず、その腕を治してもらいたいとも思ってる。それでも飯田は覚悟を決めたんだ。俺が口出ししていいことじゃねえ。