第18章 恋心の自覚
「……よくわからんが、悩んでいるんだろう?俺でよければ相談にのろう。」
「いいのか?」
「勿論だとも。」
散々悩んでも答えはでなかった。なら、飯田に聞いてもらうのも手か?とりあえず、なんとなく奏の名前をださないようにしながら、強いとわかっているはずの相手をどうしてか守りたくなること、そしてどうしてか相手に触れていたくなることを伝えた。飯田は少し考えるように目を瞑ると、ゆっくりと答えを口にする。
「ふむ……。轟君、それは君が相手のことを好きなのではないかい?」
「まぁ、嫌いな相手じゃねぇな。」
そもそも、好意がなきゃ守ろうだなんて思わねぇんじゃねえか?飯田の言いたいことがわからずに首を傾げると、飯田は少し困ったように眉を下げた。
「いや、そうではなくてだな……。その、君がその相手に対して恋愛感情を抱いているのではないかと言いたいんだ。」
「れんあいかんじょう……」
れんあいかんじょう……恋愛感情?
口の中で何度もその言葉を転がしてようやく意味を頭が理解する。俺が、奏に対して恋愛感情を抱いている?最近奏の手に触りたくなるのも、守りたくなるのも、好き、だから?
「恐らくだが、その相手に頼りにされたいと無意識に思っている。だから守りたいと思っているのではないかと思ったんだが……どうだろう。」
頼りにされたい?……ああ、そうか。俺は、奏に頼って欲しかったのか。奏は、いつも俺を甘やかしてくれる。それはとても暖かくて、好きだった。けど、いつもどこか物足りなかった。あの日、奏を抱きしめた時に嬉しかったのは、奏が初めて俺に弱さを見せたから。頼られて嬉しかったんだな、俺。そして、それは――奏が特別な意味で“好き”だから。
理解した途端、わからなかったものが確かな輪郭を持ち始める。無性に奏に触れたくなるのも、“好きなのね”とお母さんに言われて照れたのも、こうして通知の来ないスマホが手放せないのも……全部、全部――奏が、好きだから。
瞬間、顔がかぁっと熱を持つ。どうして。どうしてこんな簡単なことがわからなかったんだ、俺。