第18章 恋心の自覚
考えてもらしい答えが全く出てこない。イライラとしながら頭をかくと、カラリと病室の扉が軽い音を立てた。戻ってきた飯田の表情は、俯いていてよく見えない。診察の結果が良くなかったのか?まさか、腕が動かなくなっちまったんじゃ……。ベッドから降りて、飯田の方へと近づく。
「飯田……?何かあったのか?」
「轟君……。この腕だが、後遺症が残るようだ。」
「――っ、!」
後遺症が残ると聞いて、腕を見る。まさか、俺を庇って受けた傷が原因か?
よほど深刻そうな顔をしていたのか、飯田が笑って俺にそんな顔をしないでくれと言う。
「そこまで酷い後遺症じゃないんだ。手指の動かし辛さと、多少の痺れくらいなものらしい。詳しくは緑谷君が戻って来てから話すが……俺は大丈夫だよ、轟君。」
「飯田……。」
それでも、何か思うところはあるんだろう。腕を見つめる飯田の目は少し悔いているような、それでいて何かを決めたような、複雑な色をしていた。
人間関係を今まで築こうともしてこなかったせいか、察するってことが俺にはできねぇ。だから、飯田が本当は何を思っているのかもわかんねぇ。ただ、飯田は大丈夫だと言っているし、あの時みてぇな酷い目をしているわけでもない。とりあえず、信じよう。
ずっと立ちっぱなしにさせんのも悪い。とりあえず飯田をベッドに座らせると、俺も自分のベッドに戻った。
「ところで、緑谷君はまだ戻って来ていないのか?」
「ああ。けど、すぐ戻ってくんじゃねぇか?」
スマホを確認すると、緑谷と飯田が病室を去っていたのはほんの数分程度。あれだけ悶々と悩んでいた割に、時間はそう進んじゃいなかった。
「守る必要はねぇのに守りたくなるのはなんでなんだろうな……。」
「む?」
ぼんやりとしていたのか、さっきまでひたすら悩んでいたものが口を突いて出ていってしまった。やべぇと思って飯田を見ると、困惑した表情をしている。忘れてくれ、と言うと、それを止めるように飯田が首を振った。