第18章 恋心の自覚
「まぁ……話は最後まで聞け。」
「以上が――警察としての意見。で、処分云々はあくまで公表すればの話だワン。
公表すれば、世論は君らを誉め称えるだろうが処罰はまぬがれない。一方で、汚い話……公表しない場合、ヒーロー殺しの火傷跡からエンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン。幸い目撃者は極めて限られている。この違反は、ここで握り潰せるんだワン。だが、君達の英断と功績も……誰にも知られることはない。
どっちがいい!?一人の人間としては、前途ある若者の“偉大なる過ち”にケチをつけさせたくないんだワン!?」
「まぁどの道監督不行き届きで俺らは責任取らないとだしな……。」
「申し訳ございません……。」
しょんぼりと肩を落としたマニュアルさんに、飯田が近づいて頭を下げる。それを受けたマニュアルさんは飯田の頭を軽く叩くと、もうするなよ!と声をかけて笑った。
それにしても、英断と功績……それに偉大なる過ち、か。なんだ、人を救けたことに関して責めるつもりは元々なかったんじゃねぇか。功績だとか、名誉だとか、そんなモンはどうだっていい。人を救ける、それが否定されないのならそれでよかった。
すみませんでした、と頭を下げる緑谷に続いて、俺も頭を下げる。
「よろしく、お願いします……。」
「……大人のズルで、君達が受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが……せめて、共に平和を守る人間として……ありがとう!」
責めるつもりどころか、感謝さえされていたことに動揺する。……完全に俺、空回ってんじゃねぇか。めちゃくちゃ突っかかった上に暴言まで吐きそうになっていたせいで恥ずかしくなって、思わず「初めから言ってくださいよ……。」と零す。それを聞いた緑谷がクスッと笑うのを見て、俺はそっぽを向いた。
「この話は、もう一人の子にも伝えてある。その子も君と似たような反応をしていたワン。……では、私はこれで失礼するワン。お大事に。」
署長の言ったことを聞いて慌てて前を向く。後ろ姿に改めて一礼して、もう一人……つまり、奏のことを考えた。俺と似たような反応したって、お前も空回ったんだな。
恥ずかしい姿を見せたのが一人じゃなったことに対しての安堵と、そこまで相棒じゃなくてもいいんだぞ、というおかしさで笑みが零れた。