第18章 恋心の自覚
「超常黎明期……警察は統率と規格を重要視し、“個性”を“武”に用いない事とした。そして、ヒーローはその“穴”を埋める形で台頭してきた職だワン。個人の武力行使……容易に人を殺められる力。本来なら糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは、先人達がモラルやルールをしっかり遵守してきたからなんだワン。
資格未取得者が保護管理者の指示なく“個性”で危害を加えたこと。たとえ相手がヒーロー殺しであろうとも、これは立派な規則違反だワン。君達ともう一人の雄英生徒4名、及びプロヒーローエンデヴァー、マニュアル、グラントリノ。この7名には厳正な処分が下されなければならない。」
「待ってくださいよ。」
「轟君……」
言いたいことはわかる。散々授業でもやったことだ。だが、それは規則のために救けられる人を見殺しにしろって言ってんのと同じじゃねぇか!俺を止めようとする飯田を無視し、感情のままに口を動かす。
「飯田が動いてなきゃネイティブさんが殺されてた。緑谷が来なけりゃ、二人は殺されてた!誰もヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ。規則守って見殺しにするべきだったって!?」
「結果オーライであれば規則などウヤムヤでいいと?」
「――人をっ、救けるのがヒーローの仕事だろ!」
規則は人を守るためにあるはずで、ヒーローは人を救けるための職業だ。規則のために救けられない人がいるなんて、あっていいはずがねぇ!俺の言葉を聞いた署長は、フッと笑う。
「だから、君は“卵”だ。まったく……いい教育をしてるワンね。雄英も……エンデヴァーも。」
「この犬――……!」
「やめたまえ!もっともな話だ!!」
クソ親父のことはどうでもいいが、相澤先生や雄英を馬鹿にされるのは我慢ならねぇ。掴みかかろうと、苛立ちを隠さずに近づいていけば飯田が慌てて俺を止めに入る。もっともな話だって……!?放っておいたら死んじまいそうなやつを、飯田は救けたんだ!その行為を罰するって言ってんのに、もっとももクソもあるか!飯田が腕を使えないことをいいことにそのまま近づき続けると、俺の前に緑谷んとこの……グラントリノが立ち塞がった。