第18章 恋心の自覚
「あんだけ殺意向けられて尚立ち向かったお前はすげぇよ。救けに来たつもりが、逆に救けられた。わりぃな。」
「いや……。違うさ。俺は――」
何かを言おうとした飯田をノックの音が遮る。看護師か?そう思って三人で扉の方を見ると、入ってきたのは緑谷んとこのヒーローと知らないヒーローだった。……飯田の職場体験先に所属しているヒーローか?
「おおォ、起きてるな怪我人共!」
「グラントリノ!」
「マニュアルさん……!」
知らないヒーローは考えた通り飯田の知り合いだったらしい。親しげに話す二人とは裏腹に、緑谷んとこのヒーローは怒った表情を隠さずあわあわと慌てている緑谷へと近づいていく。
「すごい……グチグチ言いたい……が、その前に来客だぜ。」
来客?来そうなやつに心当たりはない。飯田も同じく心当たりはないようで不思議そうにしている。とりあえず、座ったままじゃあれだろ。そう思ってスマホをベッドに放置したまま立ち上がる。すると、開きっぱなしの扉からスーツを着た犬が入ってきた。
「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ。」
「面構!!署……署長!?」
警察署長?警察署のトップがわざわざ……何だ?署長なんて大物が来たことに驚いた緑谷が、慌ててベッドから降りようとする。それを見た署長は掛けたままで結構だと声をかける。緑谷がベッドに座ったまま姿勢を正すのを確認すると、俺達がヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒かと確認を取られる。それに頷きを返すと、改めて署長が話を切り出した。
「ヒーロー殺しだが……火傷に骨折となかなかの重傷で現在治療中だワン。」
署長の言葉を聞いて、ぎゅっと手を握る。相手の強さにもよるが、基本的に捕縛は軽傷で行う方が望ましい。だが、俺達にそんな余裕はなかった。わざわざヒーロー殺しの容体を言った理由……嫌な予感がする。