第18章 恋心の自覚
――轟 side
保須市での事件が収束しヒーロー殺しも無事に警察に捕縛されると、怪我を負った俺達は近くの病院に搬送された。それぞれ怪我をした箇所を簡単に検査され、手当を受けて今は今は大人しくベッドの上で横たわっている。俺は片腕に軽く包帯を巻かれた程度で済んだ。飯田や緑谷は重症で、両腕をぐるぐる巻きにされていたり、移動するのに松葉杖が必要だったりしている。……なんか、色々と不便そうだ。
ヒーロー殺しと戦った直後ってこともあって、いつもなら寝ている時間を過ぎても眠気は来なかった。それは飯田や緑谷も同じだったらしい。消灯時間が過ぎても三人で色んなことを話していた。……いつ寝たのか記憶にねぇけど、気が付いたら寝てた。ベッドから身体を起こしてふわぁとあくびをすると、正面のベッドにいる飯田と目が合った。
「ん……はよ。」
「おお、起きたか轟君!おはよう!」
「おはよう!」
緑谷も起きてたのか。今何時だ?ベッド横に備え付けられた机に置いたスマホを手に取って画面を確認する。表示された時刻は10時過ぎで、通知はなにもない。少しだけ妙な寂しさを感じながら、画面を消したスマホをそのまま手で握っておく。
「冷静に考えると……凄いことしちゃったね。」
「そうだな。」
「あんな最後見せられたら、生きてるのが奇跡だって……思っちゃうね。」
緑谷の言うことに同意する。ヒーロー殺し・ステイン。ある程度の情報は事務所でもらった資料で知ってはいたが……想像以上の強さだった。歪んではいたがヒーローに対する熱意は本物で、それに比例するように重く鋭い殺気を放つ男だった。
「僕の脚。これ多分……殺そうと思えば殺せてたと思うんだ。」
「ああ。俺らはあからさまに生かされた。」
飯田が加わるまでのヒーロー殺しはまるでこちらを見定めるように動いていた。実際、緑谷や奏の動きを奪うことはしたものの、命を取ろうとまではしなかった。本物のヒーロー、そして贋物……。あの言葉をそのままの意味で受け取るのなら、緑谷と俺、そして奏はまだ学生で“見込みがある”と判断して生かそうとしたんだろう。けど、飯田は違う。あいつは、あからさまに狙われていた。私欲を優先させる贋物……復讐心に囚われていた飯田を、奴はそう言っていた。少し前までの俺なら、間違いなくターゲットに入っていたんだろうな。