第4章 波乱の個性把握テスト
話しかけられて見た焦凍の瞳はぐっと前を睨みつけ、憎しみで冷たく燃えていた。優しい焦凍らしくないその目が痛ましくて悲しくなる。焦凍に目標を諦めさせるには、焦凍に炎を使わせる他にない。でも、今の焦凍は炎を使うくらいなら負けを選んでしまう。そう確信できる。焦凍の闘志を燃やせて、そして左を使わせるだけの力のある人。そんな人を見つけないと。全ては焦凍、貴方の為に。
「あんまり人当たりが悪いとクラスの雰囲気壊しちゃうから程々にね。」
「……わかってる。」
「ほんとかなぁ。焦凍って言葉少ななところがあるからね。」
クスクスと笑うと軽く頭をはたかれる。ちっとも痛くないそれを受けると同時に電車のアナウンスが目的の駅名を読み上げる。席を立った焦凍に続いて次に開く方のドアの前に並んで、一緒に足を踏みだした。
――
雄英の教室は、異形型の個性に合わせたバリアフリーでドアがとんでもなくでかい。大きさの割には軽いドアを開ければ、4列並んだ机の奥、廊下側の席が一つだけ飛び出ている。つまり、1-Aは21人のクラスらしい。黒板に張られた席順と学籍番号を確認してみると、私と焦凍の席は後ろで隣同士。ちょっとしたことだけど、やっぱり好きな人の隣になるっていうのは心が躍る。席を確認するなりさっさと自分の席へ行ってだんまりを決め込む焦凍を相変わらずだなぁと思いながら私も自分の席に荷物を置いた。
「君が隣の至情さんか。俺は尾白猿夫、これからよろしく。」
「至情奏です。こちらこそよろしく。」
話しかけてきたのは鍛えられた尻尾を持つ男子で、優しそうな顔つきをしている。差し出された手を握って握手してみるとがっしりとしていて、よく鍛えられているのがわかる。見た限りだと、あの尻尾が彼の個性かな。
「一緒に来たみたいだけど、知り合い?」
「うん。幼馴染なんだ。」
話に出たんだし、焦凍の肩をつつく。ぼんやりと外を眺めていた目をこちらに向けた焦凍に尾白君が見えるように位置をずらして紹介する。けど、一度だけぱちりと瞬きしてぶっきらぼうに「轟焦凍だ。」と名乗ると、すぐに視線を窓へと戻してしまった。
「……嫌われたのかな、俺。」
「ちょっとぶっきらぼうだけど、優しい人だから心配しなくても大丈夫だよ。」