第17章 激突、ヒーロー殺し!
「偽物が蔓延るこの社会も、いたずらに力を振りまく犯罪者も!」
首に巻き付けた赤い巻物を風に靡かせ、身体が硬直して落下し始めていたヴィランへとナイフを突き立てた。命を刈り取られて抵抗をなくした身体は容易く重力に引っ張られて地面へと落ちていく。
「粛清対象だ……!」
地面へと着地したヒーロー殺しは倒れたままの緑谷君の背に手を置いて拘束している。路地裏での戦いからして、多分あいつに緑谷君を殺す意図はない。ただ、人質にはなってしまう。
ヒーロー殺しの行動が人助けか、あるいは人質を取りに行ったのか判断がつかなくて混乱するプロヒーロー達が慌てながらも戦闘態勢を取る。
「何故ひと固まりで突っ立っている!?そっちに一人逃げたはずだが!」
「エンデヴァーさん!」
後ろから聞こえてきた聞き覚えのある声に振り返ると、エンデヴァーさんがこっちへと走ってきていた。あの翼のヴィランを攻撃してたのは、エンデヴァーさんだったのか。
「あちらはもう!?」
「多少手荒になってしまったがな!して……あの男はまさかのヒーロー殺し!!」
私達の視線の先を見たエンデヴァーさんがヒーロー殺しを見つける。本来の目標を見つけたエンデヴァーさんの口元がにやりと弧を描き、やる気満々で炎を放とうと構える。緑谷君の姿が目に入ってないんだ!
「待て、轟!!!」
緑谷君が人質にされている、と伝えようとしたのかグラントリノが慌てて制止の声をかける。するとヒーロー殺しは緑谷君から手を離して立ち上がり、私達の方へと振り返る。
「贋物……」
ぞわりと、背筋を冷たいものが這う。路地裏で感じた殺意よりも更に威圧感のある気迫が私達を地面へと縫い付ける。ぎらりと赤く輝く目が、空気すらも赤く染め上げていく。
「正さねば――誰かが、血に染まらねば……!“英雄”(ヒーロー)を取り戻さねば!!」
あまりの気迫に私達雄英生は勿論、周りにいるプロヒーローやエンデヴァーさんまで息を飲む。誰もヒーロー殺しから目を背けることも、動くこともできないままその場で凍りついていた。