第17章 激突、ヒーロー殺し!
「私は特に何もできなかったし……うん……」
謝る飯田君に、私は特に何にもできなかったから謝らなくていいと手を振ると、焦凍がぎろりと鋭い目つきで私を見てくる。危険だって言われた近接戦闘を仕掛けにいった挙句、よそ見をして戦線離脱。無茶はしないって言ったのにとんだ無茶だ。そりゃ怒るよね。
「敵から目を離すとか、何考えてんだ。油断すんなよ。」
「うっ、返す言葉もないです……はい……。」
言い訳するなら、私なら近接戦闘でもそう酷い結果にはならないだろうとか思ってた。ついでに言うなら、私が前に出れば焦凍も傷を負うことはないだろうとも。だから、余計に焦凍に攻撃がいったことに動揺した。焦凍なら、人魚姫に指示なんて出さなくても避けられたかもしれない。なんで敵から目を離しちゃったかなぁ私。――なんて、本当はわかってる。焦凍のことを大切に想い過ぎて、1ミリたりとも怪我をさせたくなかっただけ。感情が理性を吹き飛ばして、致命的な行動を取ってしまった。
よっぽど肝を冷やさせてしまったらしく、謝っても焦凍の怒りは収まらない。そのまま大人しく焦凍からのお説教を受けていると、小さく羽ばたきが聞こえた気がした。
「っ、伏せろ!!!」
「ヴィラン……!?」
グラントリノの慌てた声を聞いて、反射的に頭を伏せる。急速に近づいてきたそのヴィランは私達の頭上ギリギリを飛ぶと、緑谷君の身体を足で鷲掴みにする。そして、強い羽ばたきの音と強風を私達に叩きつけると猛スピードで去っていく。
「緑谷!!!」
「緑谷君!!!」
ヴィランから落ちてきた血がぱたぱたと私達に降り注ぎ、頬や服に飛び散っていく。ヒーローに負傷させられて逃げてきたのか。猛スピードで飛び去っていく翼を持ったヴィランをキッと睨みつける。私なら、後を追える!目の前に円を作り出し、飛び出そうとした足に力を入れた――その瞬間、べろりと生暖かくぬめる何かが頬を撫でる。気が付いた時にはその人物は私達の横を素早く通り過ぎていく。