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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第17章 激突、ヒーロー殺し!


 一瞬、飯田君の心が折れてしまったのかと思った。けれど、飯田君は折れなかった。もう一度ヒーローとして立ち上がろうとしている。ただ、立ち上がる理由はヒーロー殺し好みの理由ではなかったらしい。

「論外。」

 そう言うや否や、とんでもない殺気がこの場を満たす。もう、私達が戦ってそこそこ経っている。プロヒーローの応援が来るまでもうすぐのはず。それなのに逃げようとするどころか、更に標的を殺そうと躍起になっているような……。殺気を皮切りに、ごうっと熱風が吹き荒れる。――戦闘が再開した。

「馬鹿っ……!!ヒーロー殺しの狙いは俺とその白アーマーだろ!応戦するより逃げた方がいいって!」
「そんな隙を与えてくれそうにないんですよ。さっきから明らかに様相が変わった。奴も焦ってる。」

 ヒーロー殺しと打ち合ったからわかるけれど、相手はとんでもなく速い。私と組手してて多少速さに耐性がある焦凍はともかく、慣れていない緑谷君がかすり傷程度で放置されていたのは手加減されていたから。プロヒーロー達の応援が来る前に標的を殺すため、本気で焦凍達と戦っているんだろう。2対1じゃだめだ。誰かが加勢しないと負傷者が……いや、下手したら死者がでてしまう!緑谷君が動けるようになるまであと何秒!?私はいつ動けるようになる!?焦躁に駆られるまま手を動かそうとするけれど、指すら動かない。悔しい……!

「轟君、温度の調整は可能なのか!?」
「左はまだ慣れねえ。何でだ!?」
「俺の脚を凍らせてくれ!排気筒は塞がずにな!」

 ぐぅ……!と痛みを我慢するような飯田君の声と、心配するように名前を叫ぶ焦凍。急かすように声を荒げる飯田君。ハラハラしながら今か今かと身体が自由になる瞬間を待っていると、ばきぃっというめちゃくちゃ痛そうな音が聞こえた。殴ったのは、聞こえてきた声からして緑谷君と飯田君か。

「お前を倒そう!今度は犯罪者として、ヒーローとして!!」
「たたみかけろ!!!」

 そして、何度か打撃を入れるような音が聞こえた。一瞬の無音の後、氷結の走る音がして、

「うおおおお!?」
「あーっ!至情さんごめんんんん!」
「え!?何――いたい!」

 二人が私の腰と腕に凄い勢いでぶつかってきた。痛い。主に腰が。思わず手を腰に当てようとして、ぴくりと手が動く。
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