第17章 激突、ヒーロー殺し!
「轟君、至情君、そして緑谷君も……関係ない事で、申し訳ない……。」
「またそんなことを……」
「だからもう、三人にこれ以上血を流させる訳にはいかない。」
飯田君の突き放すような言葉に緑谷君が怒りを滲ませた。でも、続けていった言葉は復讐になんて囚われていなかった。決心したような、何かを思い出したような、そんな声をしていた。今の飯田君の顔は、どんな顔をしているんだろう。
「感化され取り繕おうとも無駄だ。人間の本質はそう易々と変わらない。お前は私欲を優先させる偽物にしかならない!“英雄”を歪ませる社会のガンだ。誰かが正さねばならないんだ。」
憎悪をこれでもかと詰め込んだような、低くておぞましい声と殺気が飯田君に向けられているのを感じる。……ヒーロー殺しのように“世のため人のために命を懸けて守る英雄”に憧れを持ち、それをヒーローという職業に求める人は一定数いる。特に、今は“ヒーロー飽和社会”なんて言われているようにヒーローとなることが一種のステータスと化しているところがある。そう、皆が“世のため人のため”とヒーローになるわけじゃない。それが現実なんだ。それを許せないっていったって、理想だけでヒーローがやっていけないのは当然の話。ヒーローだって人である以上生きていくためにお金は必要だし、人を愛したり、幸せを求めたりもする。それを捨てろって言うのは、ただのわがままじゃないのかな。
結局、ヒーロー殺しが言っているのは極端な意見であり、ヒーローと“英雄”をごっちゃにしてしまった原理主義だ。志だけは参考するとしても、その全てを聞く必要はない。焦凍も耳を貸すなと飯田君に言っているのが聞こえてくる。けれど。
「いや、言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格など……ない。」
「飯田君……!」
「けれど。それでも……折れる訳にはいかない。俺が折れれば、インゲニウムは死んでしまう。」