第17章 激突、ヒーロー殺し!
前衛の緑谷君と後衛の焦凍で2対1。でも、油断したとはいえスピードに自信がある私もあっさりと退場しちゃってるから、油断はできない。せめて誰か一人、加勢できたら……!んぎぎ……と諦め悪く個性に抗おうとしてみるものの、ぷるぷると身体が震えるだけで動く気配は未だなし。ああ、ほんっともどかしい!
勢いよく地面を踏みつけるような音や、コンクリートを破壊する音、そして断続的に感じる熱気と冷気。それら全てが緑谷君と焦凍が激しい戦闘を行っていることを私に伝えてくる。飯田君は、これを見ているんだろう。今にも泣き出しそうな顔だ。
「止めてくれ……もう、僕は……」
「止めて欲しけりゃ立て!!!なりてえもん、ちゃんと見ろ!!!」
ばきん、と氷の割れる音がまた背後から聞こえて、熱気が私を襲う。焦凍にヒーロー殺しが接近しているってことは緑谷君はまた斬られたか、すり抜けてこられたか……。多分、今は自分に近づかせないように広範囲の攻撃で威嚇している状態だと思うけど……素早い相手なら、隙を見て突破してくるはず。焦凍の最後の守りにするために、人魚姫に焦凍を庇うよう指示する。……耐久の全くない人魚姫は攻撃を受けたら消えてしまう。勿体ない使い方だけど、私が動けない以上仕方ない!
「氷に炎。言われたことはないか?“個性”にかまけ、挙動が大雑把だと。」
「ぐっ……!」
随分近くでヒーロー殺しの声が聞こえた後、人魚姫との繋がりが切れる。一撃は人魚姫が防いだ。でも、すぐに二撃目が飛んでくるはず……!お願いだから、避けて……。ぎゅっと祈るように目を閉じた時、聞こえたのは頼れる委員長の声。
「レシプロ……バースト!!」
甲高い鉄の折れる音、そして人を蹴り飛ばす音が続けて聞こえる。一撃目でヒーロー殺しの獲物を折り、二撃目で蹴り飛ばした光景が目に浮かんだ。……それより、飯田君が加勢に入ったことでまた2対1の図に戻った。緑谷君の場合は個性にかけられたとしても解除までが短い。これなら、すぐに3対1になる。飯田君が動けるようになったことを喜ぶ緑谷君の声が私にも聞こえてきた。