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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第17章 激突、ヒーロー殺し!


「防御に重きを置いた剣術で囮を買って出たか。実力も悪くない……。お前も生かす価値がある……。次は、お前だ。」

 ヒーロー殺しの声が聞こえた後から、氷結の音と氷を切り崩す音ばかりが聞こえてくる。焦凍に背を向けた状態の今、焦凍がどう戦っているのかわからない。せめて、私が焦凍の方を向いてたら人魚姫に細かく指示が出せたのに……!何にもできない自分が歯がゆい……。

「何故……三人とも、何故だ……。やめてくれよ……」

 自分が動けないもどかしさからか、あるいは自分が仇を打てない悲しさからか。苦しげでか細い震えた声が飯田君から聞えてくる。いつもの飯田君なら、ボロボロで戦う緑谷君達を心配するはずなのに……らしくない。けれど、これが1つのことに囚われてしまうってことなんだ。もしかしたら、私もそうだったりするのかな。わからない。

「兄さんの名を継いだんだ……僕がやらなきゃ。そいつは、僕が……」
「継いだのか。おかしいな……俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃなかったけどな。お前ん家も裏じゃ色々あるんだな。」

 今まで他人を気にかけたり、話しかけたりしようとしてこなかった焦凍が、飯田君に何かを伝えようとするかのように話している。焦凍は中距離主体で、近距離でも戦えなくはないけれど私より不得手。一瞬たりとも気なんて抜けないし、そんな余裕だってないはずなのに。自分が緑谷君に救われたように、焦凍も飯田君の心を動かそうとしている。……私も、こんなところで寝ている場合じゃない。立たなくちゃ。
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