第17章 激突、ヒーロー殺し!
氷結を避けるために後ろへ大きく下がったヒーロー殺しに、もう一度接近戦を挑みにかかる。距離を詰められないように斬りかかった刃は軽く受け止められて、また剣戟を交わし合う。
私が戦線を維持している間に、焦凍は隙を突いて何度も氷結や炎を飛ばしてくる。でもだめだ。爆豪君並みの反射神経を持つヒーロー殺しは私が焦凍の攻撃を回避しようと動くとそれに合わせて回避してくる。囮の役目を果たせていない焦りが顔に出てしまったのか……何度目かの氷結に合わせて空を舞うと、ヒーロー殺しが焦凍に向かって投げナイフを2,3本放ったのが目に入った。
「焦凍……!」
「馬鹿っ、前見ろ!」
焦凍に向かって飛ばされたナイフが人魚姫に弾かれたのを見て気が抜けてしまった瞬間、焦凍に怒鳴られる。弾かれるように前を見れば、もう眼前に刃が迫っていた。慌てて空中で身体を捻ると耳元で風を切る音が聞こえて頬からぴりっとした痛みを感じた。――まずい、掠った!私の頬を斬った刃を折ろうとすぐさま攻撃を仕掛けたけど瞬時に後ろへと飛び退いたヒーロー殺しには当たらず、べろりと刃に付いた血を舐められる。途端、セメントに固められてしまったかのように身体が動かなくなり、受け身も取れないまま下へ落ちていく。
「奏……!」
ヒーロー殺しに向かって氷結を放ちながら、私の方へも氷結を伸ばしてつるりと滑らせる。焦凍の相棒で盾なのに、こんなにもあっさりと緑谷君達の仲間入りを果たしてしまうなんて……情けなさすぎる。動けないままつるつると氷を滑り落ち、ごちん!と緑谷君の肘が私のデコに当たった。痛い……。
「至情さん……!大丈夫!?」
「ったた……今のところ、一番ダメージあったのは緑谷君の肘鉄かも。」
そんな軽口を叩いた私に、緑谷君が慌てふためきながら謝ってくる。その声をBGMにしながら身体が動かないかを試すけど、ぷるぷると震えるだけでちっとも動かせない。