第17章 激突、ヒーロー殺し!
……なるほど。治癒をすれば逃げられるようんならないかな、なんて思ってたんだけど、それは無理だと。こうなったら、エンデヴァーさんが応援を呼んでくれるまで耐えるしかない。
「それで刃物か。俺なら距離保ったまま――」
「危ない!」
自分の両腕を見ながら言った焦凍に向かって鋭くナイフが投擲される。瞬時に焦凍の前に出てサーベルを振るえば、2本のナイフが軽い音を立てて弾かれる。――速い。そう思ったのは、お互い様だったのかもしれない。私を見るヒーロー殺しの目が少し鋭さを増した。
「いい友人を持ったじゃないか、インゲニウム。」
スラッとのこぎり刃のナイフを抜くと、素早い動きで私達に向かってヒーロー殺しが飛び込んでくる。皆にも、焦凍にも、近寄らせはしない。戦線を維持するためにヒーロー殺しに向かって飛び込むと、焦凍が焦った声で私を呼ぶ。その声は確かに聞こえたけれど、ヒーロー殺しと剣を交え始めた私には返事をする余裕なんてなかった。
――キン!なんて可愛らしい音じゃなく、ガリガリと互いの刃を削り合うような激しい火花を伴う鍔迫り合いを、何度も、何度も、繰り返す。私を切り裂こうとする刃をサーベルで受ける瞬間、刃を傾けて滑らせるように受け流す。刃を滑らせながらナイフを持つ手を狙って切り払う。軽やかにバックステップで切り払いを避けたヒーロー殺しは、間髪を入れずに私へと向かって突きを繰りだす。半身をずらして突きを避けると、遅れた髪の毛が数本宙を舞った。
火花を散らしながら、互いの剣速が徐々に加速する。子供を斬る気はあまりないのか、最初は手加減をしていたらしいヒーロー殺しの眼光が鋭さを増し、意識が私へと集中していくのが手に取るようにわかる。そして、それは私の戦いを見ていた焦凍にも伝わった。
背中から勢いよく冷気が迫ってくるのを感じて、凍らされる寸前に人魚姫のバックアップを受けながら宙へと舞い上がる。以心伝心の一撃。普通のヴィラン――いや、もっと狂的のヴィランだったとしても何が起こったのかわからない間に凍らされているだろう一撃だった。それでもヒーロー殺しはこれを紙一重でそれを避けてみせた。
「やっぱり、速い……!」