第17章 激突、ヒーロー殺し!
忌々しそうに乱入者である私達を見るヴィランを警戒して構えながら辺りの様子を確認する。血のように赤い巻物、そして全身に携帯した刃物――相手はヒーロー殺しか!負傷者は私達の傍にいる飯田君と、離れた所にいるプロヒーローと緑谷君の三人!ヒーロー殺しなんて強敵相手、人魚姫に一人抱えさせたとして逃げ切れる……?
最悪と言っていい状態だけど、緑谷君達を置いて逃げられるはずがない。なにかこの状況を切り抜ける策は……。ちらりと焦凍の方を見ると、何か考えがあるのか口パクで“任せろ”と言う。私は小さくそれに頷いた。
「轟君に至情君まで……」
「なんで君達が……!?それに、左……!」
焦凍のサポートを行うために集中していると、緑谷君が焦凍がためらいなく左を使ったことについて驚く声が聞こえてくる。ああ、そっか。緑谷君はまだ体育祭が終わってからの焦凍を知らなかったっけ。
「なんでって……そりゃこっちの台詞だ。数秒意味を考えたよ。一括送信で位置情報だけ送ってきたから。意味なくそういうことする奴じゃねえからな、お前は。
”ピンチだから応援呼べ“ってことだろ。大丈夫だ。数分もすりゃプロも現着する。」
そう話しながら焦凍はぐっと構え、右足でヴィランに向かって氷結を繰りだす。伸ばされた氷結は素早い動きで躱され、緑谷君達を地面から掬い上げるように氷の山を作る。続けざまに炎を左腕から放ってヒーロー殺しを狙うも、これも避けられる。でも、それでも構わなかったんだろう。氷の表面が炎の熱で溶けて、上に乗っかっていたプロヒーローと緑谷君がつるつるとこちら側まで滑り落ちてくる。ちっとも身体を動かすことができないようで、受け身も取れずに頭を氷でゴンゴン打ってたけど、こちらにも余裕がないから許して欲しい。
焦凍の後ろに控えている人魚姫に三人を円で囲ませて、治癒力を活性化させる。……飯田君も肩の怪我は酷いけど、身体が動かせない程の怪我には見えない。緑谷君や、プロヒーローもそう。……動けないのは、ヒーロー殺しの個性が原因?
「情報通りのナリだな。こいつらは殺させねえぞ、ヒーロー殺し。」
「轟君、至情さん!そいつに血ィ見せちゃだめだ!多分、血の経口摂取で相手の自由を奪う!皆やられた!」