第16章 いざ、職場体験へ!
家についたら、冬美さんが作ってくれた美味しい夕食を食べる。いつもなら後片付けのお手伝いをするのだけれど、限界まで酷使した身体はすでにお疲れモード。冬美さんのお風呂に入っておいで、という暖かい言葉に甘えてお風呂に入ったら、危うくお風呂の中で寝そうになった。
お風呂から上がると、早速明日の出張のための準備を整える。着替えや歯ブラシ、制汗スプレー等々……とにかく必要な物をちゃっちゃとスーツケースに詰めていく。忘れ物がないかのチェックを終えたら、もうすっかりいい時間。お布団敷いてその上にころんと横になれば、ボロ雑巾のようになった身体はあっという間に夢の中へと旅立っていった。
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そして、朝。事務所までブリザードドライブでやってきて、一緒に保須まで行くサイドキックの人達と合流する。そしてここから保須まで、またドライブの始まりだ。
どうしてこれで落ち着くのか甚だ理解ができないけれど、これがいいと焦凍が言うから私は何も言わず焦凍に手を差し出す。ふにり、ふにりと何かを確かめるように私の手を握ったり、指を絡めたりと、機嫌が良さそうに手を弄る。そんな焦凍とは裏腹に、私の心は大荒れだ。これは、なんの罰ゲームなんだろう。気が付けば、きゅっと恋人繋ぎにまでされている。天国か、あるいは地獄か……自分の恋心と焦凍に振り回されながら、私はこのドライブを耐えきった。
保須市に着いた私達は、まず事務員さんの手配してくれたホテルに向かう。ホテルの部屋に着いたら、とりあえず荷物を部屋に置いて直ぐに入口へと集合。事前に決めたバディと組んでパトロールを開始した。
来たことがなかったから知らなかったけれど、保須市も結構大きな市らしい。背の高いビルが立ち並び、人通りも多い。ヒーロー殺しは奇襲でヒーローを襲う。だから、大通りよりも細道を見逃さないようにしっかりと見ながらパトロールを行う。
「それにしても、ヒーローが多いですね。」
「ヒーロー殺しが捕まっていないし、それに感化された愉快犯が暴れないとも限らないからね。こうしてヒーローが見回ってるぞって見せるのも大切なんだ。」