第16章 いざ、職場体験へ!
サイドキックの人の言葉になるほど、と頷く。騒ぎが起こると、便乗して暴れようとする人は確かにいる。こうしてわかりやすくパトロールすることで犯罪の抑止にもなると。けれど、それだとヒーロー殺しはなかなか現れないんじゃないのかな?
「ヒーロー殺しは、現れた場所全てで必ず四人以上のヒーローを手にかけている。幾らパトロールを強めようとも、ああして一人で行動するような平和ボケしたヒーローがいる以上、奴は必ず現れる。」
私が口にした疑問にエンデヴァーさんが呆れた顔で前を見ながら答えてくれる。その視線の先を見れば、確かに一人だけで行動しているヒーローの姿があった。
ヒーロー殺しは奇襲を得意としていて、多対一が苦手。そう会議で聞いて知っている私達からすると、油断しきっているとしか思えない。
「警察から与えられた情報でヴィランの行動を予測するのは大切だよ。そうじゃないと、上手く相手を捕らえられないし、逆に自分自身が危険になる。こういった勘を鍛えるなら、やっぱり色々と経験しないとだね。」
サイドキックの人のフォローを聞いて、納得がいく。確かに受け取った資料にはヒーローは奇襲でやられたとは書いてあったけれど、奇襲を得意としているとは書いていなかったし、多対一が苦手だとも書いてなかった。会議で聞いた情報は、エンデヴァーさんやサイドキックの人達が資料からプロファイリングした内容なんだ。
プロファイリングはあくまで予測だけど、したのは事件解決数最多を誇るエンデヴァーさんとその事務所の人。恐ろしく精度は高いに違いない。こうした技術のあるなしでヒーローの活動に大きく差が出るのだと知らしめられた気がした。
その後、何度か休憩と交代を繰り返しながら一日中パトロールを行った。その最中で色々なヒーロー達とすれ違ったけれど、飯田君と会うことはなかった。心配して連絡を取ろうと思っても、私も焦凍も飯田君の連絡先を知らない。若干もやもやとはしたものの、職場体験二日目は騒ぎもなく平和に過ぎていった。