第16章 いざ、職場体験へ!
「さて、お前に相手を捕縛する術を覚えてもらうと言ったが、方法は色々ある。関節技を決めて相手を拘束する手段を取る者や、ロープなどの捕縛武器を使って相手を拘束する者、そして俺のように個性を使って相手を気絶させる方法を取る者もいる。」
エンデヴァーさんにそう言われて、ふと思い出したのは我らが担任、イレイザーヘッド。首に巻いている布のような捕縛武器を自分の手足のように操って相手を拘束し、投擲していた。
「手っ取り早いのは相手を気絶させてしまうことだ。お前は女で、男に比べて力も体格も劣る。だが、個性を上手く使えば相手を一撃で落とすことも難しくはないはずだ。」
そして、エンデヴァーさんによる相手の意識を落とす為のレクチャーが始まった。まずは人体のどこを狙えば安全に意識を落とすことができるかの話を聞く。その中で、爆豪君との戦いでも思った“手刀で相手の意識を落とす方法”も教わった。けど、やっぱりこの手刀は戦っている相手に決めるのは難しいようで、よっぽどの実力差がないと使えないらしい。
「理想は初撃で相手を沈めてしまうことだ。パワータイプなら、腹に重い一撃を入れてやればそれだけで相手は動きを止める。お前の個性は筋力を上げることには向いていない。だが、衝撃を倍にする……つまり、相手に一撃入れた瞬間にその運動エネルギーを増加させてしまえばパワータイプに負けず劣らずの一撃を繰り出せるだろう。」
エンデヴァーさんのアドバイスに、目から鱗が落ちる。私の筋力なんて男子に比べたら雀の涙。でも、運動エネルギーを増加させるだけで強い力が生じることは今まで私が散々加速に使ってきたからわかる。運動エネルギーを増加させるだけなら私の身体に負荷もかからないし、手軽に強い一撃を出せるようになれる。ぱぁっと顔を明るくした私に、エンデヴァーさんは厳しい表情をしたまま口を開く。
「衝撃は攻撃が相手に当たった瞬間に伝わる。タイミングも、制御も、シビアな技になる。しっかり励め!まずはこのヴィランを模した人形で訓練を行う。」