第16章 いざ、職場体験へ!
「さて、お前達はまだ仮免取得もしていない学生だ。職場体験とはいえヒーロー資格未取得者に無茶をさせることはできん。基本的には手を出さず、俺やサイドキックの指示に従って動け。いいな。」
そう、私達にはまだヒーロー資格がない。保護管理者であるプロヒーロー――この場合、エンデヴァーさん――の指示があった場合に限って個性の使用が認められている。前線で戦うだろうエンデヴァーさんの傍にいるのは一見危ないように思えるかもしれないけれど、私達の場合はそういった指示が出る場合があるから逆にエンデヴァーさんの傍にいないと危険度が増す。
エンデヴァーさんの指示に従わないといけないという事実と、手を出せないという事実に焦凍の顔が不服そうに歪む。でも、何も言わないのは焦凍だってそれが正しいと理解しているから。私達が理解していることを把握したエンデヴァーさんは一つ頷くと、サイドキックの人達と保須で行うパトロールの調整を始めた。
「今までに得た情報を整理すると、ヒーロー殺しは奇襲を得意としているヴィランだ。恐らく、多対一には向かん個性を持っているのだろう。囲んで倒してしまいたいところだが、相手も馬鹿じゃない。大人数でパトロールをすれば姿を隠すはずだ。故に、パトロールはバディで行う。少人数編成となるからには定時連絡は怠るな!」
「はいっ!」
バディ――二人一組でチームを組めと言われたサイドキックの人達は、手慣れた様子で話し合ってチームを決めていく。その中に加わらなかった書類を皆に配っていたサイドキックの人をエンデヴァーさんは手招きし、そして私と焦凍を見る。
「焦凍。そして奏。お前達は俺とこいつのチームに加わり、フォーマンセルでのパトロールを行う。」
「はい。よろしくお願いします。」
「……わかった。」
呼ばれたサイドキックの人と挨拶を交わしていると、部屋で保須市に連絡をしていた事務員さんがノックをして会議室に入ってくる。無事に市と連絡が取れたと報告した事務員さんにエンデヴァーさんは満足そうに頷きを返して全員に号令を出す。
「聞いた通りだ。明日の朝、保須に向けて出発する!各々準備を怠るな!」
「はい!」
「よし。さて、お前達の今日の予定だが、これからこいつに事務所内を案内してもらえ。案内が終わったら、終業時間まで基礎訓練だ。では、解散!」