第16章 いざ、職場体験へ!
「来たか。」
大きな執務机で書類を見ていたエンデヴァーさんがにやりと笑いながら席を立ち、受付嬢に下がるように伝える。退室を命じられた受付嬢は一礼すると、私達を置いてそっと退室していった。
のっしのっしと近づいてくるエンデヴァーさんを見て、焦凍が舌打ちをするのが聞こえる。冷さんに会って前を向くことを選んだ焦凍だけど、まぁ受けてきた仕打ちを考えたらこの二人の関係性が急に良くなるはずがないのはわかる。けど、隠そうともしない焦凍にはちょっとだけ苦笑が零れた。
「焦凍、そして奏。お前達はこれからプロのヒーローがどういったものかを実際に体験することになる。
例えば、ヒーローの実務が何かだが……お前達もよく知っている通り、基本は犯罪の取り締まりだ。事件発生時には地区ごとに一括で警察から応援要請が届く。逮捕協力や人名救助などの貢献度を国に申告、そして専門機関の調査を経て国から給金が振り込まれる仕様になっている。
給金は基本、歩合制だ。故にヒーロー飽和社会と言われる今はより早く、的確にヴィランを捕らえられるヒーローでなければ生き残れん。」
ヒーローは国からお給料を貰っているから一応公務員の括りに入る。それは授業で習ってたけど歩合制なのか……。つまり、これだけ大きな事務所を構えるには、それだけ多く貢献しないと成り立たなくなる。事件解決数最多のエンデヴァーさんだからこそ、これだけ大きな事務所を構えられるんだ。
「そして、ヒーローの実務はこれだけではない。事務所を構える以上は、この市の治安維持のためのパトロールは勿論、己を鍛えるための基礎訓練や個性制御訓練は当然必要だ。あとは……そうだな、CM撮影やインタビューの取材などの依頼も入ってくることがある。
事務所によって細かい所は変わるが、基本はこれでいい。」