第15章 束の間の平穏
「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」
「そ。で、その指名の集計結果がこうだ。」
葉隠さんの言葉に頷き、黒板に指名件数が映し出される。焦凍が4,123、爆豪君が3,556、そして私が1,345。他のクラスメイトに対する指名数と比べると、あからさまに私達に偏っている。
「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った。」
「だ――白黒ついた!」
「見る目ないよね、プロ。」
がっくりと身体を椅子に預けて叫ぶ上鳴君と、あまりの差に憤慨する青山君。確かに、私達三人は表彰台に立てた組だし実力も見せられたとは思うけど、これは“1年ながらヴィランの奇襲に負けなかった”という話題性と個性の派手さで決まった気もする。
「1位2位逆転してんじゃん。」
「表彰台で拘束されたやつとかビビるもんな……。」
「ビビってんじゃねーよプロが!!」
「流石ですわ、轟さん。」
「ほとんど親の話題ありきだろ……」
逆転した指名数を見た芦戸さんと瀬呂君に遊ばれている爆豪君を見て苦笑を零す。1位を取れる実力と、個性の派手さ。両方ともにプロが注目するには十二分すぎるとは思うけど、やっぱり性格って大事よね。
指名を貰って喜びを表す人、指名がなくて落ち込む人。それぞれ個々の反応を見せる私達に先生は続ける。
「これを踏まえ……指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。
お前らは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった。」
確かに、実際に経験してみるのとみないのとでは、大きく差がでてくる。事実、体育祭で私達A組で決勝トーナメントを埋められたのも、この経験による差が大きい。そして、実際にプロの活動を体験するってことは、私達もヒーローとして振る舞うことになる。つまり、自身を指し示す“ヒーロー名”が必要不可欠と。
「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきたぁ!」
「まぁ仮ではあるが、適当なもんは――」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!!この時の名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」