第14章 体育祭の終わりと、スタートライン
……そして、焦凍が丁度お風呂に入りに行った後、私はエンデヴァーさんに呼ばれて私室へと通されていた。
正座をして座る私とエンデヴァーさんの間に、冷たい緊張感が漂っているように感じる。今から、何を言われるのか。ごくりと固唾を飲み、膝の上に置いた手をぎゅっと握り締める。
「体育祭での戦いは見させてもらった。……お前に不利な状況の中、良くやった。お前の負けは、俺の教育方針の問題だった。弱点である打撃の弱さは、職場体験の折にでも俺が指導してやろう。これからも励め。」
「……はい。」
敗北という結果で終わってしまったから、怒られることを覚悟していた。けれど、実際はその逆。よくやったと言われて、若干困惑する。焦凍が左の炎を使ったことが、それだけ嬉しかったのかな?
……それに、婚約の件についても何も言われなかった。つまり、私と焦凍の関係は今までと何も変わらないということ。ああ、本当によかった。まだ、私は焦凍の傍にいられる。
話はそれだけだったようで、すぐに私は解放される。エンデヴァーさんに一礼し、そっと部屋から出ると大きく安堵の息を吐いた。
……そういえば、核石の異変についてエンデヴァーさんに報告するのを忘れてた。エンデヴァーさんも、お母さん譲りのこの個性についてはあまり知らないようで、異変があればすぐに知らせるようにと言われている。未だに黒ずみの取れない右手をそっと撫でる。
……まぁ、明日になっても回復しないようならエンデヴァーさんに相談しよう。
不安でいっぱいだった気持ちが嘘のように軽い。思わずスキップでもしてしまいそうなテンションのままに私は自室へと戻り、目を閉じた。